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『ごめん…………ボクのこと、キライになったよね…………ごめんなさい、許してなんて言わないから、どうか、覚えていて……………愛してる………サヨナラ……―――』
ルリは去っていった。悲しい言葉をおれに残して、おれのもとから消えた。触れようと伸ばした手は、途中で止まっていた。だって、捕まえたかった彼の腕は、おれの体なんかよりずっと激しく震えていたから。
そこで気がついた。ルリは怖かったんだ。おれに嫌われることが。彼の精神の殻を破って、彼自身の神経にその激情が表れてしまうほど、恐怖していたのだ、と。
でも彼はそんな恐怖よりも、おれの体の方を気遣ってくれた。どれほどの勇気が、彼を突き動かしたのだろう。
「おれ………………」
もう、何をすれば良いのか分からなくなっていた。彼への謝罪の言葉も出てこなかった。彼が予想した通り、おれは彼を嫌ってしまった。たぶん、次に触れられたら、おれはまた壊れてしまうだろう。
けれどそんな彼にも、ただひとつだけ伝えたい言葉がある。
「あり、がと…………ルリ……」
正直、1ヶ月の禁欲生活はおれの体を悪くしていた。たった1度きり出しただけだが、それでもだいぶ体は楽になった。ここ最近は毎日のように朝勃ちして、鎮めるのが大変だったのだ。これでしばらくは朝勃ちに悩まされることもない。
今の言葉はそれに対しての気持ちだ。
ルリが出ていった後も、おれはずっと閉じられた扉を見ていた。どこかほんの少しだけ、泣きたい気持ちになった。
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