「誰だ………遠雷か?」
「そうだよ。ボクはエンライさ」
 フードを目深にかぶった男は口元を歪ませながら、左の手首を見せつけるように腕をあげた。腕には金色に光るバングル。
 足取りはふらふらと一定しなく、男はかくんと首を傾げる。いや、傾げると言うよりかは頭を支える力を消したという方がしっくりとくるか。
「金色のバングル………遠雷の証か」
 遠雷である証拠を見せ付けられた好樹はその顔を歪ませた。好樹は思う。いったい遠雷が自分1人に何の用があるのかと。
「ふふふ。金色のバングルはエンライの証。そうそう。だからボクはエンライ。ボクはエンライのメンバー」
 飄々とした話し方。まるで自分に言い聞かせるように何度も同じことを言う。そこには遠雷にたいする恭順の意は感じられない。そのことに好樹は違和感を感じるも、吸収されたチームのメンバーの可能性を考えて思考を振り払った。かつて吸収されたチームの者ならば、遠雷を尊ぶ意が薄くても不自然ではないからだ。

「そんで。遠雷がおれに何の用だ。喧嘩か?」
「ケンカ!? ハッ! 違う違う」
 遠雷の者だと言う男は好樹の言葉に、心外だとでも言うように叫んだ。
 男は一度言葉を途切れさせると口ずさむように言った。
「これは蹂躙だよ」
 男の口元には愉悦が浮かぶ。
「一方的な、嬲り立てさ!」


 

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あきゅろす。
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