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「お前さー。何したいわけ」
問うと、ルリは悲しそうな、苦しそうな顔をして言った。
「………だって、サ……キにひめ……られ……うんだもん」
その声は小さすぎて、良く聞き取れなかった。
「は? なに、聞こえねー」
次にはもう、予想していた展開が起こった。
「…………ヤらせて」
熱の籠った目を向けられる。いくら男とヤってるって言っても、それはおれが十分に信用した奴とだ。それだって巽を合わせて2人しか居ない。2人はどちらも鴇代のメンバーで、遠雷に吸収された後は去っていった。
だからおれは即答した。
「やだ」
「なんでっ!? だって、だって」
「だっても何もねえーよ。今すぐおれの上から退いて、出てけ」
確かに、鴇代に居たときは他人の目も憚らずにキスやらなんやらしていたが、まさか遠雷にまでその情報は届いていたのか?
「お前、何聞いたか知らねーけどさ、別におれ、誰とでもヤる訳じゃねぇーんだけど。おれは決まった奴としかヤんねーから、諦めな」
鴇代に居たときも、一時期はそんな″ビッチ″説が飛び交った。その時は2人が誤解を解いてくれたのだけれど。
「……………違うよ。ひめが、苦しそうにしてたから…………だって、ひめ4年前から―――」
「―――なあ、おれの何知ってんのか知らねぇけど、そう言うの、やめてくんね? はっきり言って迷惑」
4年前。その単語から、ルリが知り得ているおれの情報の内容もだいたい予想できる。そして、ルリがそれに同情してこんな事を言ってるのも分かる。
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