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「…………で、お前は何してんの」
「なにって、ナニ?」
 先ほどからホシキはおれの膝に乗り上げている。
「てか近いし、重いし、降りろよ」
「ひめが…………さっきから、ずぅーっと、お見舞いお見舞いって言うからぁ」
 たぶん怒っているのだろうホシキ。キレイな赤い瞳が夕焼けのオレンジを反射して金色に光っていた。
「なにむくれてんだし。見舞いが何だよ。お前には関係ないだろ。てかマジで行かせろよ、病院。もう夕方じゃねーか。最悪」
 顔を必要以上に近づけてくるホシキを押し返すが、効果は見込めない。こいつはこんな女顔だが、腐ってもおれより長身で喧嘩の強い男だ。体重だっておれの方が軽いだろうし。
「ホシキ、まじウザイって」
 言ってやると、問題のホシキは更に密着してきた。腰と腰がぶつかる。
「ルーリー。ルリだってば。ボクの名前。呼んだら膝から降りてあげる」
 唇が触れあいそうな至近距離でホシキ……ルリが言う。しかし、ここで時間を食っても仕方がない。おれは渋々とした口調で″ルリ″と呼んでやった。
 ルリは約束した通り、膝からは降りてくれた。膝からは。
「お゙い。マジでテメェふざけんなよ? どけっつってんだろが。おれは用事があんだよ」
「いいじゃん。お見舞いなんて明日行けば。今日はボクと一緒に居ようよ。てか、泊まってく」
 ムカつくことをほざくルリは、現在おれを見下ろしている。そしてルリの頭の向こう側には白い天井。
(押し倒された………)
 何の飾り気もないその天井を、おれは面倒だと思いながら見ていた。


 

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あきゅろす。
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