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 記憶から引っ張り出してきた名前を口に出すと、(たぶん)ホシノが嬉しそうに口角を上げた。
「うっわあぁぁ! 覚えててくれたの? ほんと? スッゴい嬉しい! あ、でもー。ちょっと外れー。ボクの名前、ホシノじゃないしー! 穂司生、ルリねー?」
 ルリって呼んでー、と言っているホシキは、その間にも飲み終わった空き缶を後ろの2人に投げつけている。とうてい、そんな口調からは想像もつかないような暴言とともに。
「姫と同じ空気吸ってるとか生意気。あんたの節だらけな手を切り落として【ピー】にぶちこんで【ピー】して、あ、ついでに洋ロウソクに火付けて【ピー】の上にロウを落としてやろうか。和ロウソクと違って洋ロウソクって融点が高いから【ピー】に落としたら火傷で再起不能になっちゃうかもねー。いいきみ! それともー、このナイフで2つの袋をもいであげよっかぁー?」
 ホシキの発言で2人はすっかり震え上がってしまった。追い打ちをかけるようにホシキがナイフを取り出して舌で舐めて見せると、2人は悲鳴をあげながら去っていった。せめてゲロにまみれた人間だけは持っていって欲しかった。
「あーあ、逃げちゃった。半分冗談だったのに」
 今の発言は半分本気であると言っているようなものだ。
「ま、あんな奴らに触りたくもないけど。……ひめーぇ! ねね、元気してた? 病気とかしてない? あ、怪我とかは? さっきの奴らに殴られたりとか触られたとかしてない? 大丈夫? 気分悪くなったりとか――」
「一通り大丈夫だ、ホシキ」
 それよりも、早くここから立ち去りたい。ゲロの臭いで胸くそ悪くなりそうだ。


 

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あきゅろす。
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