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「うっせえぇええ!! 放しやがれっ朱雷っ!! クソがっ! てめぇーらそいつから離れろ!! そいつに触れんなあぁあ゙あ゙ー!!」
「姫っ!! ちょっ、落ち着いて!? うわっ」
 朱雷に掴まれている腕を振りほどこうと、精一杯の力で蹴りをかます。だが、朱雷は一瞬怯んだだけですぐに体勢を立て直し、おれの暴れる体を拘束した。ついには関節を押さえつけられて、ほとんど動けないまでになってしまった。
「はなせっ! はなせぇっ!! 何だよ。何でだよっ!!? そいつが何かしたのかよぉおっ!!!」
 おれの頭の中は混乱している。自分でも分かるほどに、怒りで身体中が赤く色づいている。
「ひめ、ああぁ! もうっ! おいってめぇら、そいつはもういい」
 朱雷がそう言うと同時に、おれの関節が悲鳴をあげた。朱雷が関節を今まで以上に押さえつけたのだ。
「ぅい゙っ…………ちく、しょう」
 朱雷に命じられた遠雷の2人は、やっと中心に倒れている人物から離れた。
 倒れている男の片腕は歪に曲がり、精悍だった顔は無惨に腫れている。口からは血を流していて、内臓がやられている可能性もある。破けた服にはあちこちに鮮血がついていて、彼の出血の多さを物語っていた。
 もちろん、彼は今気を失っている。
「は、はやくっ、病院、病院は!?」
「大丈夫だよ姫―――」
「―――大丈夫な訳ねぇだろっ!!? あんなに、血が、ああっ! 血が! 死ぬって、死んじまう!」
「姫、姫、今連絡してるから。だから少し落ち着いて。ね」
「う、う…………」
 どうして彼がそうなったのか、何故彼なのか。そもそも今ここに彼が居るはずがないのに。
「いみ、わかんねぇ…………――」
「ひめ、ごめんね―――」


 

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