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「………………おれが信じた人が、おれの信じる人です」
「信じた人、かぁー」
 ほくほくと笑う朱雷。
「何かおかしかったですか?」
「いんや。姫はすごいなぁーって。信じないのは楽だけど、信じるのはとてもとても、勇気がいる。姫は勇者だねえ」
「ゆ、ゆうしゃ?」
「でね、ウチも姫とおんなじ勇者だよー? ウチは四紳の皆を信頼してるし、リーダーを信じて今まで着いてきた」
 わずかに頬を染めて語る朱雷。
 ああ、彼は今、幸せなんだろうなって見ていて思えた。
 彼は一度唇を潤すと、舌尖を開く。
「姫は今どこか、遠くにいる。同じではないかもしれない、鴇代と遠雷は。でも何事も不変はありえない。何かが変わらなくては、ウチらは決して成長できないから。だからウチらは共に変化を遂げなければならないし、幸せにならなくちゃならない。過去の史に敬意を払って、ね。
 姫たち鴇代は遠雷の中で孤立している。まるで遠い親戚の家に預けられた子どもみたいだ。…………ウチらはそんなに信じられないかな。仲間とも見なしては貰えないのかな。ウチは悲しいんだよ。君らがつくっている壁を見ているのも、それを突き破ろうとしない遠雷の奴らも。見ていて空しくなる。ああ、ウチらはこんなものをつくるために遠雷を作った訳じゃないのにって。
 ねえ、ウチは姫のことも、遠雷にいる奴ら全員、仲間だと信じてる。助け合って、騒いで、喧嘩して、そんなチームにしたいんだ」
「………………おれに、おれらに、遠雷を信じて欲しいってことですか?」
 朱雷は悲しそうに微笑んだ。


 

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