24(noside)



 遠雷には四紳とあだ名される4人の幹部が存在する。
 狂犬を擬人化したとまで言われる″皓雷(こうらい)″。
 美しい華には棘があると、まさにその伝承通りの″朱雷(せきらい)″。
 聡明な頭脳を持ち、絶対零度の感情を誇示する″静雷(せいらい)″。
 誰よりも防御に長け、それに見合った巨体の″點雷(てんらい)″
 四紳が集えばそこらの中小規模のチームなら潰えると、専らの噂だ。実際、鴇代との決戦で不利になったとき彼らが居たからこそ挽回できたのだから。
 あの場面で遠雷側にはチームの長も、副長もいた。だが流石は鴇代だ。何を力の源にしたのか――あるいは王のプライド故か――遠雷を上回る実力を見せつけた。そこで、四紳が出てきた。彼らが参戦したことにより、場面は一気に覆る。たった4人の力で遠雷を勝利へと導いたのだ。
 けれどその力ゆえか、容姿ゆえか、存在ゆえか、四紳を憧憬の対象にする者に反し、嫉妬と憎悪の感情を持つ者も少なくなかった。
 虎と鳥と竜と亀。伝説の守り神。
「バカげてるよなぁ。まあ、おれも姫とか、ひ、姫………まじねぇわ。てか誰だよおれのことンな寒ぃ名前で呼んだ奴。ガチでヤりてぇ。誰のせいで―――」
 ここにはひとり、ただ独りで夜の街を眺める少年がいた。
 彼は嘆く。甘い、甘い煙を吸いながらネオンを映す瞳を細めた。
「はあ、連絡先ぐれぇ残せっての。バカたつみ――さみぃんだよ。ひとりじゃ………」
 わざわざタバコ専門店まで赴いて、入手したその銘柄が示すのは、彼の淋しさか、彼の怒りか。
 ただ甘いだけのタバコ。苦味も、今の彼の嗅覚では察知できない。
 ″たつみ″の好きであったそのタバコをくわえて。別に伏せた目に涙はなかった。でも彼は嘆いていた。
「やっぱ、甘ぇ、よ……てめぇの心みたいに、どこまでも甘い」
 夜は明ける。ネオンが薄まる。太陽の光が彼の瞼に降り注いだ。
 その日彼は高台にある芝生のうえで眠った。


 

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あきゅろす。
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