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「たつみ………」
 掠れた声が出た。おれが戻る音がする。ピースがぴたりと嵌まるみたいに、おれの心と躰が一緒になった。
「好樹? もう、イきそうっ」
 巽が抱き付いてきておれの首筋に顔を埋(うず)めた。
「イけよ。おれもっはぁ、合わせっからっ」
「好樹、好樹、よしき……すきだ」
「知ってる」
 針で刺されたような痛みが首筋に走って、キスマークを付けられたのだと気付く。
「愛してる」
 ガンガンと強くなる律動。巽の腰に強く当てられ続けた尻の感覚は既に麻痺している。
「オレじゃ、ダメか?」
 震える声で巽は尋ねる。
「……たつみっ、あぁ! ふっ、はっあ。……巽じゃあ、っタリナイ」
 熱い息が混じった声で足りないと言う。巽では、無理だと言う。
「ムリだっ、ぁ、お前一人じゃ、消せないっ」
 消せないのは、おれの穢れ。穢いおれの躰は、いつまでも浄化されない。こうやって、他の男に躰を捧げてもおれはキレイにならない。
「……好樹っ―――呼んで、オレの名前っ」
「巽」
「もっと」
「巽っ、巽……たつみ。――きに……――り――とう」
「うん。う、ん」
 ああ、このキレイな笑顔がおれは好きなのだと思った。いつも、その笑顔を曇らせてしまうのはおれなのだが。
 じんわりと胎内に熱を感じて、おれは言ったのだ。

「好きになってくれて、ありがとう」

 けれど、おれには言えなかった。答えられなかった。分からないから、分かりたくないから。
『愛してる』
 この言葉には、何も言えなかった。


 

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あきゅろす。
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