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「抜けるっ………!?」
 ガキの頃からつるんでいる、幼馴染み兼親友の、竜 巽(たつ たつみ)が打ち明けた決意。遠雷を去る。
 吸収されたチームにはよくある現象だ。鴇代にいたってはその華々しい歴史が有るためか、尚更にチーム抜けの者が多い。
 鴇代が遠雷に吸収されてから1ヶ月が経つ。そろそろチーム抜けの波も鎮まり始め、遠雷内の雰囲気も穏やかになりつつあった矢先のこと。鴇代内で最も仲の良かった巽が、そんな兆候もなく唐突に、本当にいきなり遠雷を抜けると告白した。さらに不良からも退(の)くと言う。
 不満はない。ただし喜びもない。
 巽がどうしようと、それが巽の意志ならば、おれがどうこう言えるものではないから。
「ごめん、シキ」
「なんでっ――」
 酷く申し訳なさそうに、沈んだ声音で謝る巽。彼の茶目に陰がおりる。
「なんで謝んだよ。お前が何を考えて、どうしてこういう結果になったのか……。そんなのは知らねーけど、決めたんなら罪悪感なんか感じてねえで、突き進めよ。おれは巽の背中を押すだけだ。――偉そうなこと言うけど、お前の好きなように生きれば良んじゃねぇーの? 自分に抵抗してたら、人生苦しいだけだろ」
 呆けた顔でおれを見下ろす茶目と、巽よりも色素の薄いおれの茶目とが交わった。しばしそうしている内に、巽はもとから甘いマスクをさらに柔らかく崩した。


 

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あきゅろす。
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