12(side Luri)
当時のボクは、今よりもずっと馬鹿でヤンチャで。誰にも必要とされない悲しい子供だった。ごみ溜めのような汚い世界に毎晩足を運んで、見かけたやつらを誰かれ構わずなぶり倒していた。浮かれたように肉を弾いて、骨を折って、蹴りで相手を吹っ飛ばす。わざと急所を狙った、喧嘩とも言えない蹂躙で弱者を弄んで。繰り返し、繰り返し。
一生こうして生きて行くんだと思い始めた時に、とうとう家族から見離され、帰る家を失った。既に家族と言う存在を忘れかけていたボクに、それは酷くどうでもいいことだった。家を失ったことも、家族の絆を絶ち切られたことも。とくに感傷的になることもなかった。
幸いにも容姿に恵まれていたボクは、女の家を渡り歩いて好き放題に生き続けた。
いつしかその生活が色のないものだと気が付いた時には、もうボクには何も残されて居なかった。振りかえると、あったのは失うばかりの、捨ててばかりの灰色の人生だ。
頼れる女も離れていき、温かな寝床がある幸福を初めて感じた。泣きそうになって公園のベンチで膝を抱えて。彼に遇ったのは、内も外も真っ暗闇に塗り潰されて、ボクが潰れる寸前の事だった。
真っ暗な色に包まれて夜に溶け込みそうな彼に、ボクは色を貰った。それは希望を示す、翠色。
ボクの暴力を、扱いずらいナイフを得物にさせることによって抑えつけ、私立の中学への編入を手配してくれて、家までも用意してくれた。何よりも嬉しかったのは彼がくれた言葉。
――失うのが恐いのなら、守り抜け。
――奪われたのなら、奪い返せ。
――欲しいのなら、追い求めろ。
―――大切なモノを″諦めるな″。
―――ホシキ ルリにはそれだけの力がある。
ボクには、守り抜く力も、奪う力も、諦めない力もある。彼は言ってくれた。ボクに希望と、目標を与えた。
彼について行く希望と、悠理 好樹を手に入れると言う目標を。
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