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 頂点に座する鴇代と、その歴数ヵ月の新参者・遠雷。双方の決戦はすぐさま周辺地域全域に知れわたった。今まで戦争を避ける行動を見せていた鴇代が、開戦の決断を下す契機となった姫の負傷。好樹に施された刃物による無数の切り傷を見たリーダー、以下幹部らが半ば怒りの勢いで、半ば冷静に開戦を宣言した。

 鴇代70に対して遠雷110。さすがは王座を奪い取った鴇代か、40の差があるにも関わらず遠雷に対して少しの後れもとりはしなかった。
 しかし未来は味方しない。姿を現さなかった幹部4名が戦に参戦してから、鴇代の優位は明らかに劣戦へと机上の駒が翻される。2人、3人と戦闘脱落者が増えていく鴇代。敗北を約束されたかのような彼の闘いには、かつて王と名を残した絶対的な強者は、もうそこにはいなかった。

 ―――Nov A.M.03:44
 鴇代は3年という月日を経て、今ここに、王座を譲る。

 鴇代は消えた。遠雷に吸収を余儀なくされた鴇代のメンバーは、その大半が遠雷を去った。
 鴇代を失い、遠雷を捨てる。彼らに残ったものは不良であることへの硬く不器用な矜恃のみ。心情が揺らめく彼らが再び拠り所を得るまで、地域一帯の夜は荒れた。

 冬に入り寒風が吹き始めた頃、悠理 好樹を取り巻く環境に変化が訪れようとしていた。


 

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あきゅろす。
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