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薄暗い部屋の中。携帯の明るすぎる白い画面。凝視するのは青年とも少年ともつかない不安定な時期の男。
普段、性格の明るい男が決して見せないような表情。険しい表情が浮かぶ。
悠理 好樹(ゆうり よしき)は少し充血した眼の光を強めた。
好樹が住んでいる地域には鴇代(ときしろ)と呼ばれる不良集団がある。4年前に発足した鴇代は確固たる実力で次々と他のチームを沈めていった。潰したチームを吸収してはまた他のチームを潰す。この繰り返しで当時最大のチームであったサソリを沈め、鴇代は不良達の頂点へと上り詰めるに至った。
だが、頂の座を手にしゆうに1年がたった頃、鴇代の足下を揺るがすような新興チームが現れた。遠雷(えんらい)と呼ばれるチームは、鴇代をも凌ぐ実力で多数のチームを翻弄した。
「くそっ!! 何なんだよ! あいつら。まじぶっ潰す!」
齢16になったばかりの好樹が、感情のままに握っていた携帯を壁に叩き付けた。青色のハードカバーに覆われた携帯は壁にぶつかった衝撃で精密な内容物を撒き散らす。
壊れた携帯などには目もくれず、好樹はベッドの上にある青のパーカーを羽織った。怒りで制御の効かなくなった足の運びによりアパートの薄い床に衝撃が走る。靴を履くのもそこそこに、好樹は雲が立ち込める暗闇の中に身を投じていった。
鴇代の現状は苦しいものだった。すでに中小規模チームのある程度を吸収した遠雷は、2週間前、戦の準備は整ったとばかりに鴇代に宣戦布告をしてきた。
いくつかの闘争の結果は芳しいものではない。時が経つにつれ少しずつ戦闘不能者が出始め、比例するようにメンバーの疲労も膨れ上がった。現状、鴇代は遠雷に押されている。
2013/04/28 改訂
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