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妖怪少女、花子ちゃん
解決!


「な、なんですかこれ!!」
「妖怪だよ。」
「よ、妖怪!?」

静香は黒いモヤを見るが、どうみても静香が想像している妖怪とは思えない形である。

「妖怪は本来、悪戯したり驚かすけど危害を加えない。でも人間の悪い気を吸った妖怪、人間を恨む妖怪は、異質な姿に変わって人間に危害を加えてしまうの。こんなものにね。」

花子は黒い妖怪を指差す。

「それは人間界と妖怪世界の均衡が崩れて全世界が滅んでしまう。…それを止めるために私達が居るのよ?」
「え?どういう…」

「騙してごめんね。私達、人間じゃないの。


妖怪なの………」

花子の言葉と共に、八又はゆっくりと掛けていたサングラスを外した。

「え!?」

八又の目は、白色の部分が黒く、瞳孔は血のように真っ赤な鋭い切れ目であった。

「私、妖怪世界を束ねる総大将の子供、『花子』」

「自分、花子と共に生まれ落ちた大蛇神(おろちがみ)、『八又』」

二人は静香を守るように前に立つ。

「静香お姉ちゃんをイジメたらメッ!!だよ?」
「今すぐ、暗黒の空間に帰るのだな…」

八又の手には、いつの間にか黄金色の剣を握っていた。
日本刀のように長い刃、持ち手には蛇の模様が施されている。

「花子、自分は足を切る。その隙を見て、あやつの頭を刺すのだ。」
「わかった!」

花子は八又が持っている剣に似ている短剣を、いつの間にか握りしめていた。
装飾も色も形も同じである。

八又は速いスピードで黒い妖怪の足元に滑り込む。

「ふんっ!」

八又は剣を振る。ザクリと鈍い音を出して、一降りで二本もの足を切り離した。

「ギャアアアアア!!」

黒い妖怪はその痛みに悲鳴を上げる。静香はその醜い悲鳴に耳を塞ぐ。

「今だ花子!」
「うん!」

八又の合図に、花子は脱兎の如く黒い妖怪の頭目掛けて飛んだ。

キラリと花子が持っている短剣が光る。

「静香お姉ちゃんをイジメないで!!」

その言葉と共に、ブスリと黒い妖怪の頭に短剣が刺さる。留めを刺したのだ。

「やった!」

花子が安堵の表情をした時だった。

「グアアアアア!!!」

黒い妖怪は、最後の力を振り絞って残された二本の足で静香を捕らえようとしていた。

「静香お姉ちゃん!!」
「っ!!!」

八又は静香を助けようと走るが間に合わない。

静香は痛みをこらえるかのように目をつぶった。


…だが、いくら経っても衝撃や痛みは感じなかった。
静香はゆっくりと目を開けてその場を見た。

「…………え………」

暖かい光りに包まれた自分。そして自分を抱きしめる人物に、静香は息を飲んだ。

「…麻矢?」

栗毛の短い髪に、まだ少し幼さがある丸い目…あの時、自分のせいで死んだ幼なじみの麻矢であった。

「どう…して…」
「麻矢さん、静香お姉ちゃんのことが心配だったのよ?自分を毎日責めて泣きつづける静香お姉ちゃんを見て…。その陰湿な心に引き寄せられたこの妖怪から、貴女を守ってたの。ポルターガイストを起こして、この妖怪に立ち向かったのよ?それほど、静香お姉ちゃんは大切な幼なじみなんだよ…」

花子の言葉に、静香の目から涙が溢れ出す。麻矢の背中には、静香を守るために庇ったせいか、黒い妖怪に傷付けられた後があった。
静香はその傷をまるで癒すかのように撫でる。

「ごめんね…麻矢…」

麻矢はその言葉に首を横に振る。
そして静香の涙を拭くと、にこりと笑い静香に優しく言った…。

『長生きしてね?』

その短い言葉が、静香の耳に焼き付いた。
麻矢は静香の前で光りに包まれ、消えた。静香はまた涙を流しながら、

「麻矢…っありがとう…」

と涙声で消えた麻矢にお礼を言った…。

花子は静香の頭を撫でながらハンカチを渡した…。





「静香お姉ちゃん!ジュースちょうだい!」
「はいはい!ちょっと待ってね!」

あの事件以来、静香は花子と八又のやっている探偵事務所のアルバイトをし始めた。
雑用だが、花子と遊べるので文句はない。

「静香、自分にもお茶を…」
「わかりました!」

これから先、静香の未来は何が待受けるのだろうか?




妖怪世界。

モザイクのような暗い空の下には、あの江戸城よりも大きい城が妖怪世界にそびえ立っていた。

その城の主、「獅子王」はこの妖怪世界の頂点に立つ総大将である。
見た目はまだ青年くらいの歳に見えるが、これでも他の妖怪よりか長生きしている。


獅子王は赤い着物に黒い羽衣を着ており、黒色の長髪を緩くまとめている。目は花子と同じ赤色で形の良い切れ目だ。

「…花子はまた始末したな。これでまた均衡がもとに戻ったな。」
「はっ!花子様は今、元気に遊んでおります!」

忍者姿の鹿のような角が生えた男性が獅子王に伝えた。

「そうか。…………………………………………………………………………………………やっぱ俺、人間界に行こっかな。」

「なにを言っておりますか総大将様ああああ!!!」

忍者の男は必死で獅子王を止めた。

「花子と離れ離れになってから二ヶ月!!俺の大事な娘と息子が心配なんだぞ!?」
「だからって人間界に行くなんて!!総大将様は人間界に行ったことないでしょうが!!もし道に迷ったらどうするんですか!?」
「黙れ『白鹿』!!俺は絶対に行く!!」
「行けません!!!」

白鹿は人間界に行く気満々の獅子王を止める。
その時、

「あらあら、また始まったのですか?」
「あ!!華亜弥様!!」

桃色の長髪をなびかせ、眉は平安時代のマロのようのな形をしており、白い肌、朱色の細い目、完璧な美女であった。

華亜弥(かあや)。花子の母親であり、獅子王の妻である。
着物は綺麗な十二単だ。

「花子は大丈夫ですよ。あの子の傍には強い兄上が居ますから。」
「だが華亜弥!」
「あの子達を信じましょう獅子王様。あの子達は私達の子供なのですから…」
「…華亜弥……」

「でも、人間界には一回行きたいものですね!」
「なら華亜弥!俺と一緒に行くか?」
「獅子王様と一緒なら幸せですわ。」

「誰か止めろこの天然夫婦を!!てかイチャイチャするなら別の部屋でやれー!!」

今日も妖怪世界も人間界も平和です。

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