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妖怪少女、花子ちゃん
怪奇現象

「へえ、静香お姉ちゃんの家ってアパートなんだね。」
「はい。一人暮らしですから…」
「敬語は駄目だよ。私に話し掛ける時は普通に言って」
「あ、うん。」

静香の住むアパートは1LDK。余り置物がなく殺風景だが、後はキチンと整理しており女性の家らしい感覚がある。

「今お茶を入れてきますので、座ってて下さい。」
「じゃあ遠慮なく!」
「…………」

相変わらず、八又は黙っている。
このアパートに着く前でも、花子と静香は楽しく話をしているのに、八又はただじっと二人の会話を聞いているだけで何も話さなかった。

「無口な人だなぁ。」

静香はキャッキャとはしゃぐ花子と八又を見比べて言った。

(そういえば、花子ちゃんと八又さんって、どういう関係なのかな?)

「自分と花子は兄妹だ。」
「え!?」
(読まれた!?)

静香はお茶を入れたばかりのコップを危うく落としそうになった。

「そうだよ!八又は私のお兄ちゃんなの!」
「へ、へえ…そうなんだ。」
(に、似てないよ…)





「現象が起こるのは毎回午後9時なの。」
「9時?」
「うん………」

もう月が出ている午後8時50分。
静香はたんたんと二人に怪奇現象を話す。

「包丁も飛んできたこともあって…ほら、壁に穴があるでしょう?それは花瓶が当たってこうなったんです。…………あれ?」

花子と八又はスースーと寝息をたてながら眠っていた。

「本当、大丈夫なの?」

静香は苦笑いをし、毛布を取り出して二人に被せた。

「一緒に寝るなんて…本当に兄妹なんだ…」

髪とか肌の色とか違うのに…。腹違い?

「…可愛いなぁ。花子ちゃんって。」

静香はそう呟くと花子の柔らかい頬を突いた。

その時、午後9時のサイレンがアパート中に流れた…。

ガタッガタガタガタガタ!!

「っ!!」

テレビや食器、テーブルや椅子が、何も触ってはいないのに揺れだしたのだ。

「始まった…!!花子ちゃん!八又さん!!」

二人を起こそうと静香は振り向くが、静香の頭目掛けて包丁が飛んで来た。

その時、包丁が突然、静香から逸れて壁に突き刺さった…。

「…え?…」

静香は壁に刺さったままの包丁をじっと見た。

「ポルターガイストが、起こったか…」

いつの間に起きたのか、八又は静香の前にまるで盾になるように立っていた。

「うーん…あれ?静香お姉ちゃんどうしたの?」

花子は目を擦りながら起き上がる。

「花子、始まったぞ」
「え?…あ!ポルターガイスト!!」

花子は今の状況がわかったのか、急いで静香の所に行く。

「やっぱり、麻矢なの?」
「…なぜ、そんなことを言うのだ?」
「……………実は…麻矢が死んだのは、私のせいなんです。」
「どういうことかな?」

それは、麻矢が死んだその日。
静香と麻矢はほんの些細なことに喧嘩をしてしまった。喧嘩の内容を忘れるくらいの些細な喧嘩だった。

静香は頭にきたせいで、麻矢にきついことを言ってしまった。

「麻矢なんて大嫌い!」

麻矢はその言葉に数秒間呆然とし、涙を流しながら立ち去った。

その時だ。静香の目の前で、麻矢が車に跳ね飛ばされたのだ。



「私があんなこと言わなかったら…麻矢は死なずにすんだの!あの日から私はずっと後悔してて…」
「そして、怪奇現象が怒り、その怪奇現象はその死んだ女が起こしていると、考えたのだな?」
「だって、麻矢はきっと私を憎んでる!私のせいで死んだから…だから私を憎んで殺そうとしてる!この現象が証拠!麻矢は、私のせいで…………!!!」

「静香お姉ちゃん、本当にそう思うの?」

花子は泣き崩れる静香に優しく言った。

「確かに幽霊になったものは危ないわ。だけどね、静香お姉ちゃんは麻矢さんと昔からの幼なじみだよね?麻矢さんが静香お姉ちゃんを喧嘩して死んだからと言って殺そうとする人かな?」

その問いに、静香は首を横に振った。

「違うわ…麻矢は、優しかった……」
「なら、信じてよ。麻矢さんのこと。」
「でも、じゃあこの怪奇現象は?」
「これはねぇ………」

その瞬間、静香達の居た部屋が歪みだした。

「なに!?」
「正体が出るぞ…」

部屋の歪みが段々と直ってきた反面、部屋の真ん中に黒いモヤが現れ、形を表して行く。

「麻矢さんじゃないよ?」

黒いモヤには、足が四本、尖った耳、避けた赤い口には鋭い歯がびっしり、血走った獣のような目が二つ…。

「妖怪だよ?達の悪い…ね?」





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