彼曰く、
山田について職員室に向かう。これもある意味日課になりつつある。
「さーて、お説教しますか」
『いらん』
「野宮、喧嘩は駄目だって言っているだろう」
『じゃあ喧嘩売ってくる奴にいえ』
「お前は一応女の子なんだぞー。」
『私は一応じゃなくて女だぞ』
ニコニコ笑いながら失礼な事を連発するコイツの顔を猛烈に殴ってやりたい。
「まぁ、怒んなよ。俺とお前の仲だろー?」
『変な言い方するな!』
山田の言葉に近くにいる教師たちがチラチラとこっちをみる。
よし、決めた。こいつ殴る。
「そうですよ、山田先生。野宮さんはかっこいいだけでちゃんと女の子なんですから」
『…また出たな鳳』
「おー、鳳どうした?」
山田を殴ろうとしたときだった。
背後から声をかけられて、振り返るとそこにいたのは同じクラスの鳳だった。
山田は驚いた様子もなく私の背後にいる巨人・鳳と話を始めた。
(よし、今のうちに…)
教室に帰ってしまおう。
山田と鳳は両方うざいからな。
「じゃあ、授業始まるからお前らちゃんと教室に帰れよー」
「あ、はい」
『…………ちっ』
後少しでバレずに職員室から出れたのに。
「野宮さん、一緒に教室行こうよ」
『一人で行ける』
「行く場所一緒だしいいでしょう?」
そう言って私の横に並んで歩き出した。
鳳は一年のときから同じクラスで、ある日隣の席になったときから少し話すようになった。
しかしなんでこんなに話しかけてくるんだろう。
『鳳』
「どうしたの?」
『前から思ってたけど私に話しかけない方がいい。目をつけられる』
「え?」
突き放すように言うと、なんだか少し嬉しそうに笑った。
「俺が誰と話そうと他の人にどうこう言われる筋合いはないよ。そうでしょ?」
『…………』
いつもただ笑っているだけのやつだと思ってた。
少しびっくり。
普通に自分の意見を持ってたんだ。
『それもそうだな。今のでお前のイメージがガラリと変わったよ』
思わずにやけてしまった。
「………」
『どうしたんだ。顔が真っ赤だけど』
「…ううん、心配してくれてありがとう」
頬を隠すように両頬をおさえた。
「あ、もしかして俺と話すの嫌だったりする?」
『なんでだ』
「………ふふ、なんでもないや。さっきのなしね」
質問してきてなんだ。
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム」
『走るか』
チャイムが鳴りだしたので走ろうかと思ったらガシッと手首を掴まれた。
『?』
「走ろうか」
『あ、ああ』
手首を掴まれたまま走る。
(引っ張ってくれてるの…か?)
そのままグイグイと引っ張っていかれて、授業にはあまり遅れなかったがまさかあんなに引っ張っていかれるとは思わなかった。
そして、彼が言うには私たちは友達らしい。
彼曰く、
(友達…か、悪くない)
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