テニスの王子様shortstories IV 「……のう、赤也。」 放課後の部活終わり。何時も通り二人だけでの下校。 「なんすか、仁王先輩?」 「体育の時間、話しとった奴は誰じゃ?」 俺にはもうペテンすらも出来なくなってる。 赤也の前だと言うのに、笑えもしない。 「ああ、アイツっすか?ただのクラスメイトっすよ。」 「…ホントかのう、俺にはそう見えんかったがな。」 こんなのただの醜い嫉妬だ。汚い、俺のおぞましい心の声だ。 「どうしたんすか?なんか、仁王先輩変ですよ。」 「別にどうもせんよ。……ただアイツ、二ヶ月くらい前に赤也の事を好きとかほざきよっての。」 俺がそう言うと赤也は目を見開いて、一度だけ瞬きをした。 「はい?」 そしてすぐに『あ、わかった!仁王先輩俺を騙そうとしてんでしょー?流石の俺でもそれには引っかかりませんよー。』などとおちゃらけた。 いつもの俺なら、きっとそれに乗って二人でおちゃらけるだけで済んだだろう。 ……でも、今日は。 「…違うぜよ。……のう、赤也。俺、もう………ダメかもしれん。」 「…仁王、先輩……?」 ああ、言ってしまった。 「…ソイツが憎くて、殺しとうての。…なぁ、ダメか?」 俺の醜い本音。 きっと、今の俺の顔は笑っているだろう。自分でも、骨格が自然と上がっていっていることがわかるのだ。 「…先、輩。」 赤也が驚いたような、怯えたような顔しちょる。 ……俺の言っている事は、そんなにおかしいことなんだろうか? 「大好きっすよ。」 ギュウ……。 「……赤也?」 俺の胸に顔を押し付けたままそう言う赤也。 「嬉しいっす。…俺、仁王先輩に愛されてるって事でしょ?」 そう言うと、俺の顔を見てニコッと赤也は笑った。 「…怖くないんか?俺はおまんの友達殺そうとしとるんじゃよ?」 普通の精神じゃないんよ、赤也。おまんは、それがどういう意味かわかっとる? 「良いっすよ、別に。それで先輩が俺を愛してくれるなら喜んで死んでもらいます。」 ニコリと、赤也は笑った。 「そ、…うか。」 何故だろうか?この笑顔が俺には今までで1番美しく見えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |