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テニスの王子様shortstories
1章 T



ツー…と血が俺の腕から流れ出す。

ああ、またやってしまったのだ。

テーブルに落ちていた血の付着しているカッターナイフかそれを物語っていた。
また、リストカットと呼ばれるモノをしてしまっていた。

「……あーあ。…ダメだなぁ、俺。」

ヒリヒリと痛みを帯びてきた腕に、俺は追い討ちを掛けるように再びカッターナイフを当てた。


思えば、いつからこんな事をするようになってしまったのだろうか?





******


「…お早うございます、仁王先輩。」

「おう、おはようさん。赤也。」

目の前でニコリと笑うのは俺の愛しくて愛しくてたまらない恋人。
相変わらず美しい銀髪に光が反射し、より一層美しさを増していた。

「どうしたんじゃ、その腕。」

ちょいちょい、と仁王先輩が指さしたのは俺の左手首。昨日の夜俺がリストカットをした場所…。
うっかり隠すのを忘れて来てしまった。

「…ちょっとね、」

「リスカか?」

流石、カンの鋭い仁王先輩。
俺がそう言われ黙り込んでしまったのを見て、リストカットだと確信したようだった。

「…またやったんか。……今度はどうしたんじゃ?」

……言えない。
ただ、あなたを思うと苦しくて…。あなたが俺以外の奴と俺の知らない場所で浮気しているかもしれないと思うと、怖くなって。
それで全てが嫌になってリストカットをしてしまっただなんて、言えない。

「ちょっと、ストレスが溜まっちゃったんすよ。」

「なんのじゃ?」

適当な事を言うと、直ぐにそれについての理由を求められる。

「………。」

黙り込んでしまった俺を見て、仁王先輩はハア………と、溜め息を付いた。

「俺には言えんのかのう…?」

寂しげにそう言う仁王先輩に、俺はとてつもなく胸を締め付けられた。

「っ…そんなんじゃないっス。…でも……。」


キーン…コーン………。

遠くから予鈴のなる音が聞こえる。
後五分以内に教室に入らないと俺たちは遅刻だ。

「……行くか?」

俯き加減にそういう仁王先輩。良く顔が見えなくて、なんとなく不安に駆られた。

「…ハイっす…。」




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