危険地帯
9
コンコン
「章です。失礼します。」
ガチャッ
「急に会いに来るなんてどうしたんだ?」
入ったら目の前に眼鏡をかけて白衣を着た男の人が大きな机に座ってた。
章のお父さんかな?
「父さんに言いたいことがあって来ました。
俺、経営者じゃなくて医者になりたいです。」
「医者か…、それなら診察だけで」
「違う!俺が…、俺がやりたいのは救命です。」
お父さんの言葉を遮って強く言った。
私は隣でそんな章の気持ちが伝わりますようにって祈りながら見てることしか出来なかった。
「救命だと?この病院には救命などないじゃないか!」
「作るんです!今、救命は少ないんです。必要とされてるんです。
それに、俺の夢でもあります。
俺は救命医になります。」
「…救命は大変なんだ。医者もな。お前には経営の方が…」
「俺は医者になりたいんです。
でも、父さんが言う通りちゃんと経営の勉強もします。医者として一人前になったら経営者としてもこの病院を支えます。
だから、お願いします!」
頭を下げる章。
「っ!お前は、そこまで考えていたのか…。だが…。」
「お願いします!俺の夢なんです!」
「…救命医になること、考えてみよう。
理系に進みなさい。」
「ありがとうございます!」
また頭を下げてる。
章は泣きそうだった。
私も泣きそう。
「あ、仕事中にすみません。
帰ります。」
「ん?そうだな。勉強頑張るだぞ。医者は難しいからな。
そういえば、そこの人は?」
あ、挨拶するの忘れてた!
「あの、早乙女樹里っていいます。章くんとは友達でお世話になってます。」
慌てて頭を下げて挨拶した。
「そうか…章がこんな風になれたのは君のおかげだね。
ありがとう。これからも章をよろしく。」
お父さんは嬉しそうに笑ってて私もつられて嬉しくなった。
「っ!じゃ、失礼します。」
章は恥ずかしくなったのか私の手を引いて部屋を出て行った。
振り返り様に見たお父さんはやっぱり嬉しそうで、章がちゃんと言えて良かったあ。
「章にも彼女が出来たのか。早乙女樹里ちゃん…か。
まさかあの子とはな。」
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