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危険地帯



章を追いかけて教室まで来た。
章は…机に突っ伏してて私は自分の席に後ろ向きに座った。


「章?どうかした?

俺で良かったら聞くけど…。」


章の柔らかいふわふわの髪の毛を触った。


「俺…夢を諦めなきゃいけないかも…」


小さく掠れた声で言った言葉に、ショックを隠しきれなかった。


どうして?
まだ何も始まってないのに、どうして諦めちゃうの?


「え…」


言いたいことはいっぱいあるのに、私の口からはそれしか出てこなかった。
















帰り道、無言で歩いてく私たち。


「ねぇ、俺…さっき章に何て言って良いか分かんなくなっちゃって…でも、これだけは思ったよ。

何で始まってもないのに諦めちゃうの?
医者なりたいんでしょ?
ずっと夢見てきたんでしょ?」



少し前を歩く章の腕を引いて私の方を向かせて言った。


下を向いて首を横に振る章。


「ねえ…?」


私の肩に頭を乗せた。


「…俺の家、大病院なんだ。父さんは俺に医者じゃなくて経営にまわってほしいんだって。

この前の進路希望、父さんに文系に行くように言われた。

俺は…、医者になれないんだ。」


もたれてきた章の背中に手をまわした。


「お父さんには…言ったの?
医者になりたいって。」


首を横に振って私の腰に手をまわす。


「じゃあ、まだ何も始まってない。
お父さんに医者に、救命医になりたいって言うの。」


私をぎゅって苦しいくらいに抱き締めてくる。


「それからだよ。ね、章?」


肩の上で小さく頷いた気がした。


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