危険地帯
10
「あ、英二おつかれー!とうっ!」
「うわぁっ、樹里!?」
グラウンドに降りて行ったら英二を見つけたから抱きついた。
いっつも何か嬉しいことあると英二に抱きついちゃうんだよね。
「お疲れさまっ!そんで、2得点おめでとっ!」
「っ!ふっ、ありがとー!樹里!」
私は全然気づいてなかったんだ。
英二に抱きついた私を亮先輩が見てたことに。
そして、その先輩に英二が気づいて見せつけようとしてることに。
「ちょっと、そんなにぎゅってしたら苦しいよ?」
「そうだよ、有馬。樹里くんを離したらどう?苦しがってるよ。」
「先輩、樹里がオ・レ・に、得点の祝いに抱きついてるんですよー。2点入れた、オレに。邪魔しないでもらえます?」
「っ!あれは2点とも俺がアシストした。樹里を離しなさい。」
「だから、」
「こらあ、お前らまた何やってんだっ!コーチがミーティングしようとしてるのに…。
また、樹里を取り合いか?いい加減にしろっ!」
いっちゃん登場〜!
今日は助けられっぱなしだね。
あ、英二はともかく亮先輩も叩かれてるυ
2人はまだブツブツ言いながら走って行った。
「ありがとうございます、いっちゃん。」
「いえいえ。樹里が誰かに…―っ!いや、何でもない。
後は頼めるか?俺は仕事があるから…」
「?
大丈夫ですよ。お仕事行ってらっしゃいっ!」
「っ!あ、ああ。行ってくる…。」
いっちゃんの顏真っ赤だったけど足早に行っちゃったから何も聞けなかった。
日焼けしたのかな?
「よし。これで終わりっと。
あ、英二っ!亮先ぱ…い…」
「あ、「樹里」?」
2人が笑いながら話してて思わず声をかけたけど振り向いた2人の目の前にいる女の子たちの姿が見えて…思わず立ち止まってしまった。
何か私、睨まれてる?
英二たちを見る女の子たちの視線はまさにハートって感じなのに、私に対しては冷たいって気づいたら、何だかそこにいちゃいけない気がして、私はそこから走って逃げ出した。
「「樹里っ!」」
私が走り去ったあと、女の子を振り払って追いかけてきた2人には気づかなかった。
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