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涙のあと




私は一週間前までは一人っ子だった。
そう、一週間前までは…。



「ただいま。」


「おかえりっ、絢!」


「っ!龍先…「お兄ちゃんだろ?」


「…お兄ちゃんυ」




そう、私には2つ上の義兄が出来たのだ。それも超がつくほどの美形の。


なんでこんな平凡な私にこんな美形な義兄が出来たのかというと…





私のお母さんが再婚したから。


しかもその相手が有名な藤堂財閥の社長。生活は常にアメリカという超がつくほどのお金持ち。
もちろんお母さんはお義父さんの元へ喜んで行っちゃったんだ。



私はせっかく勉強を頑張って入った高校を諦めてアメリカに行くというのも可哀想だからとかなんとかいって、
なんと、このお義兄ちゃんのマンションへと連れてこられたんだ。




「絢、ママと離れて寂しいと思うけどお兄ちゃんがいるから大丈夫よね?
何かあったらいつでもこっちに来ていいんだからね。」




なんて言っといてママはあっちで新婚生活満喫中。新しいパパと仲良くやってるから私が入る隙なんて全くない。
実質的に私は此所で生活を送らなければならないのだ。




「はぁ…υでも、よりにもよってなんで龍先輩が私のお義兄ちゃんになるのよ。」






龍先輩。私が好きな人。そして、私のお義兄ちゃん。


入学式で体育館がわからなくて迷子になった私を助けてくれたのが龍先輩だった。
低いのに優しい声、栗色の少しくせっ毛の髪、少したれ目で優しそうな瞳。

その全てに私の目は奪われた私は競争率10倍と言われる龍先輩に恋してしまったのだ。


それがよりにもよってお義兄ちゃんだなんて。




「…ぐすっ。」




初めの内は嬉しかった。兄妹になれれば今まで全く関わりのなかった龍先輩に近付けると浅はかにも喜んでいた。


でも、今は悲しい。大好きな龍先輩とは兄妹だから。お義兄ちゃんを好きだなんてこれはイケナイこと。


枕に顔を押しつけて声を殺して泣いていた。








「(はあ…。いっぱい泣いたかも。目、ヒリヒリする。)今何時だろ?」



コンコン




「…はい?」


「絢?お腹空いたんだけど…、夕飯まだかな?」


「…えぇ!?今何時?ごめんねっ、すぐ作…る…。」


「…学校で何かあった?」




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