愛言葉を叫びましょう lessonW 〜響side〜 カチャッ すっかり日も落ちた時刻に生徒会会議室の扉を開けた。 生徒会員と委員長同士が会議する広間。 当然、部屋の中は真っ暗で誰もいなかった。 更に奥には生徒会員しか入れない、生徒会室がある。 当然この時間だから人はいないはずだ。 しかし、少し開いた扉の隙間から明かりが漏れていた。 (まぁ…一応見ておくか) ここは金持ち校。見回りなんかしなくたってセキュリティーばっちりだから、不法侵入なんてできやしない。見回りしたって意味がない。 それでも、俺がその扉の向こうを覗こうとしたのは、会いたい人がいたから。 ゆっくりと生徒会室の扉を開けた。 キィ… ほら、やっぱりいた。 猫っ毛で小さくて、動物みたいなヤツ。 「すー…」 鷺宮 瑞希は、机に突っ伏して寝ていた。 腕の下には今日の仕事。 「また居残りしやがって…」 こいつは副会長のくせに仕事が遅い。でもその分、一生懸命に丁寧に仕事を成し遂げる。 まあー最近は本人も仕事が遅い事を気にしているのか、少しずつペースを上げている。 だから、片付かなかった仕事は放課後。それでも終わらなかったら寮に持ち帰っていた。 「でっけークマ作って…」 瑞希の目元のクマをなぞるように触る。 「ん…」 瑞希は何だか気持ちよさそうに、俺の手に頬を寄せてきた。 「なんで頼らないかねー…独りで何でも抱え込んで…」 えいっ、と柔らかい白い肌をつねる。 「!んっ…」 すると一瞬ビクッと体が反応し、気持ちよさそうな顔が少し歪んだ。 (かわいい…) ふいにそう思ってしまったのは確かだ。 俺は瑞希が好きで仕方がない。いつも強がって頑張っているこいつを見て、甘やかしたいと思うようになったのはいつからだろう…。 いつだって独りで頑張ってて、それでいて甘えたいくせに甘えられない。 辛いくせに…周りを優先して自分の気持ちを出せない。 ほんと… 「不憫な性格…」 柔らかい髪をそっと撫でた。 閉じられた瞼にキスを落とし、順番に唇へキスをする。 ちゅっ… そっと唇を離すと、またさっきみたいに頭を撫でた。 「ま…そんなお前が好きだけどな。」 俺は次の見回りをするべく、そっと生徒会室から出て行った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |