Title 04.傷つけられる前に傷つけた(リボ風) それはちょっと 意味が 違うんじゃないか? 04.傷つけられる前に傷つけた(リボ風) 「…遅い」 右手首につけた腕時計を見てそうつぶやく。この俺を待たすだなんてイイ度胸じゃねーか。俺をこんなにも待たせている人物を脳裏に描き舌打ちする。 今日はいつもの任務とは遥かに格が違う重大なものだというのに。命を落とす危険性だってある。だからいつもならめったに着ない防弾ジョッキを身にまとい、銃弾だって倍の数は持ってくるほど意気込んだ。だがパートナーがそれでもいつも通りに遅刻するとなると気も緩むというものだ。 いつだってマイペースなパートナー、風。数年前から行動を共にしているが未だによくわからない。常に笑顔を絶やさず、見た目にそぐわない強大な力をもつ男。しかもその笑顔は決して笑顔の仮面を張り付けているのではなく、正真正銘心からの笑顔。ある意味怖い。 そして出会ったときから風はどんなときでも必ず遅刻するという厄介な癖を持っていた。本人曰わく「時間に縛られたくないんです」だとよ。職業病時間厳守が基本だというのに、それを破っても許されるのは風の他にいない。 電話で急かそうにもあいつはめったに電話にでない。何のための電話だ。まあ自分から電話はかけてくる。ほとんどが任務とは全く関係ない雑談だが。自分が飼ってる猿がどうしただが弟子がどうとか。本当にこの世界には似合わない。 もう待ち合わせ時間から30分が経とうとしている。こうなったら無駄だとわかっていても1度は電話をかけるべきか。ケータイを取り出し履歴から風の名を探す。アドレス帳よりこっちのほうが手っ取り早い。そしてかけようと思ったちょうどその時、交差点のむこうから走ってくる風の姿を発見した。風は息を切らさずに俺の元までやってくる。こう見えて体力は人一倍あるんだ。 「すみません、ちょっとあんまんが美味しくできたもので…」 「なんだその理由……って、おい」 「どうかしました?」 「どうかしましたじゃねーよ。何だそのカッコ」 風の風袋はなんというか異常だった。カンフー服なのはいつもと変わらないがズタボロ。しかも軽装備。 「これから行く場所わかってんのか?」 「もちろん。絶対服使いものにならなくなっちゃうでしょう?」 「まあそうだろうな」 それが何の関係があるのか。こんな時でも服の心配か。本当にこいつは理解不能だ。 風はいつものようににこやかに微笑む。 「ほら、敵さんに服を傷つけられるとすごくもったいなくなるじゃないですか」 「……そうか?」 「そうなのですよ。それならいっそ自分で傷つけとけば気にならないかなと思いまして。名案でしょう?」 こいつの目はあくまで真剣。ふざけてなんかいない。これを本心から言ってるとなると大変な変わり者だ。 …そんなこいつが好きな俺も相当な変わり者だがな。 お題お借りしました↓沈黙モノクロォム ←→ |