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Title
05.独りじゃないと実感する(骸雲)





ずっと1人で生きてきた

1人で生きていけると
僕は思ってた

いつだって僕は1人…
否、「独り」だった

でも、今では…




05.独りじゃないと実感する(骸雲)






とくん。

とくんとくんとくん。

規則的に鳴る命を刻む音。彼が生きていることを告げている音。彼の胸に体を預けてずっとその音を聞いていた。なぜだか安心する命の音。最初の頃よりは少しばかり早く鳴っている。それは彼だけじゃなく僕も同じだった。
クスクス…ではなく、クフクフと頭上から笑い声が落ちる。


「恭弥君ったらどうしたんですか?何かありました?変なものでも食べました?」
「…どういう意味だい?それ」
「だって君からこんなスキンシップを求めてくることはないでしょう?だからどうしたのかと思いまして」
「いいじゃないたまには。素直に君はこの状況に喜んでいればいいんだよ」
「…はいはい」


ぎゅうっと、背に腕を回してさらに体を密着させる。

とくんとくんとくんとくんとくん。

また、音が早くなった。それは僕の音とも混ざり溶け合う。お互いに何も声を発さなければ、聞こえてくるのはこの音だけだった。

とくんとくん。

生きている限りは永遠に続く音。それが1つではなく2つあるということは今までなかった。思えば、こうして他人の生きているという音を聞くのは初めてだ。

とくんとくん。

この音が、告げる。
独りで生きていたころの僕はもういないと。独りじゃない。その事実を。


「……骸」
「なんですか?」
「…なんでもない」
「もう…」


まんざらでもなく彼は笑う。それに自然とこちらも口角が上がった。
こんなことも今までにはなかった。

彼に会って変わったこと。彼に会って知ったこと。いっぱいある。

彼に初めての敗北と屈辱を味わわされた。
彼に初めて本気の殺意を覚えた。
彼に初めて乱された。
彼に初めて愛を説かれた。
彼に初めて恋愛感情を抱いた。

彼に、初めて。
彼と出会ってからの僕は今まで生きてきた十数年の時を全く塗り替えてしまった。後悔はしていない。むしろよかったと思ってる。

とくんとくん。

少しずつ命が刻まれてる。少しずつ死に近づいていることも示す音。そんなことずいぶん先のことのように思えるけど、もしかしたら明日急にこの命が終わるかもしれない。

もしも彼が先に逝ったらどうなる?溶け合った2つの音は1つに戻り、何事もなかったかのようにまた命を刻み続けるのか。また独りに戻るのか。

…冗談じゃない。その時は僕も一緒に死んでやる。

そんなことを考えている自分自身に驚いた。僕はもう彼なしでは、独りでは生きていけない。
良いことなのか悪いことなのかわからない。でもそれが僕の本心だ。


「ねぇ骸」
「また『なんでもない』ってのはなしですよ?」
「…大好き」
「っ!?」


とくんとくんとくん。

この命は、君と共に。










お題お借りしました↓沈黙モノクロォム



あきゅろす。
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