Title 03.服の裾をひっぱる(骸綱) お前のこと大好きだから 「甘えたい」って 思っちゃうんだよ? 03.服の裾をひっぱる (骸綱) この身長差、ありえないだろ。 そう思うのは付き合うようになってからずっと続いてるけど、今日、今現在それを強く思った。 オレと骸の身長差は約20pある。元から、自分で言うと悲しくなるけどオレは背が高くない。だけどそんなの関係なくこいつの背はデカいんだ。 ちっちゃいオレとおっきい骸。その組み合わせが余計に差を広げてるんだと思う。ちくしょう、少しくらいよこせ。なんでかわからないけどこいつもふくめてオレの周りは背が高い人が多い。だからオレのちっちゃさが目立つのなんの。ああヤダヤダ。 なんでいきなりそんなこと考えてるかと言うと、今オレが骸と並んで歩いてたから。歩いてた。過去形ね。骸はもうオレよりもずっと先に進んでいた。人ごみの中、もうあの特徴的な後頭部でしか認識できない。 骸がデートしましょう!ってしつこく言うから受け入れてやったのになんだこれ。おいしいケーキ屋さんがあるから2人で行きましょう!って目を輝かせていたのはどこのどいつだ。 最初は隣に並んで歩いてた。しかしそこで身長差…いや、コンパスの差が現れた。骸はオレよりも20pくらい背が高い。その20pのほとんどは確実に足に回されている。骸の足はムカつくくらい長かった。だから同じペースで歩いているつもりでも骸のほうが早くなるのは当然のことだった。 追いつくために少し走ろうか。そう思い骸の姿を探す。 しかし、骸の姿はもう見あたらなかった。 「あいつ…オレのことおいてった…」 「人聞きの悪いこと言わないでください」 「え?」 声のしたほうに振り向けば骸が立っていた。いつのまに。 骸はため息を吐くとオレの頭を撫でる。 「全く、気がついたら君がいないんだから焦りましたよ。わざわざ戻ってきてあげたんだから感謝しなさい」 「オレがいなくなったことくらいもっと早く気づけよ…」 「はいはいすみませんでした。もうはぐれちゃダメですよ?」 「むぅ…」 お前がおいてったんじゃないか。子供扱いなんてするな。 言いたいことはいっぱいあるけど、骸が「今日は僕が奢りますよ」と言ったのでやめておく。そのかわりいっぱい食べてやるんだから。 すでに歩き出している骸に早足で駆け寄る。骸の手はポケットの中。だからオレは骸の制服の裾を掴んだ。少し引っ張ると骸は足を止める。 「どうかしました?」 「はぐれちゃダメって言ったでしょ?これなら絶対はぐれないじゃん!」 「…本当に君は可愛い人ですね」 何が可愛いのかオレにはよくわからなかった。だけどこれなら並んで歩けるから、それが嬉しくてオレは笑った。 ←→ |