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Title
angel(骸綱)





「天使って、本当にいるのかな」


ぽつりとつぶやいた言葉。ほんのちょっとした疑問。
ふっと頭に浮かんで、ただそのまま言っただけだった。それでもそれを聞いた骸は、けっこう真剣に考えてくれていた。


「天使…ですか。僕はいないと思いますよ」
「どうして?」
「天使というのは字の如く天の神の使いというものです。神ですらいるかどうかあやふやなのに天使がいるわけないじゃないですか」
「…夢がないなお前」
「僕、どちらかといえば仏教よりですからね。キリスト教やユダヤ教には興味ありません」


まさか天使の話に宗教のことまでちゃんと考えて返されるとは。宗教とかオレは完全無視なのに。主にクリスマスがいい例だ。キリストの誕生日を祝う気なんてさらさらなくても、バカ騒ぎだけは忘れない。キリストも涙目だろう。

そして言われてみれば、たしかに骸は仏教よりだった。六道という思想も輪廻という思想も仏教のものだ。骸がどこからともなく召還する蓮の花だって、仏教に縁のある花らしい。いつだったか歴史で習った気がする。
オレには全然よくわからないけど。


「でも、いたらいいよな」

「そうですか?天使といえばやはりふんわりとした金髪に純白の羽根に頭には金色のわっか、そして全裸ですよ?卑猥極まりません」
「だーかーら、夢壊すなって。それに絶対全裸ってわけじゃないし」
「いいえ全裸です。全裸以外はこの僕が認めませんよ!」
「………」


…これが、まるで全裸を希望しているような発言をしている男が、一体どの口で卑猥極まりないとか言ったんだろう。
むしろこいつの存在自体が卑猥極まりない。たまに裸ジャケットだし。いつ猥褻罪で捕まっても文句は言えなさそうだ。


「でも、そのような天使はいなくても、違う天使ならいるかもしれませんよね?」
「違う天使?」
「はい。今まで上げた例とは異なる天使です」
「?」


よく意味を理解できない。そんなオレに骸は目を細めてクフフと笑う。
長く整った指が俺の髪に絡まった。


「例えば髪。金髪じゃなくて、ハニーブラウンの柔らかい色合いでもいいと思いません?」
「え…?」
「要は『穢れなきイメージ』ですよね。羽根が生えていないと、金色のわっかがないと天使じゃないというわけではありません。まあ、全裸じゃないのが惜しいですが」


そう言うと骸は俺の両頬を大きな手で包み込んだ。ひんやりとしか感触が気持ちいい。
真正面から向かい合って、骸の綺麗な不対の瞳に俺の顔が映し出される。


「僕にとっての天使は君ですよ。君以外の天使なんていらない」
「…お前、ベタすぎだって…!」
「クフフ、顔真っ赤ですよ?僕の可愛い可愛い天使さん?」
「うるさい!」


だけど、満更じゃないと思ってる自分もいた。

お前だけに幸せを運ぶ天使になら、なってやってもいいかもしれない。








angel
(天使)









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