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Title
取り敢えず、ずっと君といられればいいかな(骸雲)





ただひとつの望み、夢。

それを叶える力が欲しい。




取り敢えず、ずっと君といられればいいかな(骸雲)






「恭弥君には夢や願いがありますか?」


真っ白な原稿用紙数枚を手に窓から現れた骸は、唐突にそう言った。

どうやって登ったの。
土足はやめてよね。
あ、スリッパ持参?
ならいいや、次からはノックしなよ。

頭の中だけでとりあえずの疑問は解消されていく。ただ骸のその言葉の意味だけがわからないままだった。


「どうしてそんなこと聞くの。なんか変な感じ」
「学校でレポートを提出したのですが書き直しを命じられましてね」
「へえ?」


珍しさに声をあげる。一応優等生である骸が書き直しを命じられるなんて一体どんな内容のものを書いたのか。


「で、議題は?」
「将来の夢や願い」


議題は中学生らしく典型的なものだ。どちらかといえば小学生よりな気がしないでもないが。


「それでどんな酷いこと書いたの?」
「酷いことなんて何ひとつ書いてませんよ。僕はただマフィアの殲滅や世界対戦を…」
「…君、変なところで馬鹿だよね」


普通思ってもそんなこと書くか。
というかまだそんな夢をもっていたのか。
ああわかった、こいつは厨二病患者なんだ。
だからこんなふざけたこと書いてるんだ。

そうひとりで勝手に納得づけるも骸はそれを否定する。


「夢を偽ってはいけないでしょう!?ありのままの心を書いて何が悪いんです!?」
「夢とはときに虚飾で塗り固めなければならないんだよ」
「そんな…っ」


骸はショックのあまり口を閉ざした。こんなことくらいでショック受けるんじゃないよ。

もうこいつはこのまま放置して帰ってしまおうか。そう思い移動しようとしたところで腕を掴まれた。


「…何」
「僕はこんなことを話しにきたのではありません。貴方の意見を参考にしようと思いたずねに来たのです。さぁ言いなさい恭弥君の夢を!!」


…ああ、めんどくさいやつ。

そんなの適当にすればいいのに。
そう、適当に。
僕は骸の耳に唇を寄せそっと囁いた。


「とりあえず、ずっと君といられればいいかな」
「へ…?」


骸はポカンと、けれど嬉しそうな顔をしている。ほんとに単純なんだから。

これが本音か嘘かなんて、そんなことは教えてあげないよ。





 



あきゅろす。
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