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08.いつかはこうなる運命だったんだから(骸綱)





いつもの学ランではなくタキシード。その手には武器である槍ではなく花束。
そんなカッコで現れただけでも怪しさ炸裂なのに、それを上回るとんでもない言葉が骸の口から紡がれた。


「結婚しましょう。綱吉君」


ぽっ、と頬を染めはにかみながらオレの手に花束が渡される。よくわかんないけどきっとこれってめちゃくちゃ高いんだろうなー、目の前で燃やしてやりたいなーとか思ってもどうにもならない。
オレはプロポーズされたのだ、骸に。同性に。

ああ今すぐここから逃げ出したい!というかこれは夢だよな夢だと言ってくれ、本当にオレは今ごろ温かい布団の中にいるんだ!!
…と半ば現実逃避に陥っていたが、厳しい現実はそれを許してはくれなかった。


「ほら綱吉君、婚姻届もちゃんと準備してあるんですよ?あとは綱吉君のサインだけです」


ピラッと骸の胸ポケットから取り出された一枚の紙。それはすでに必要事項は全て記入されている間違いなく婚姻届だ。
骸の言った通りに本当にあとはオレのサインだけで終了だ。オレの分の欄まできっちりと勝手に書かれてる。

流されるな沢田綱吉。ここではっきりと断らなければ知らないうちにオレとこいつは婚約しているかもしれない。
サイン偽造くらい骸にとっては朝飯前だ。それをしなかったのは骸のほんと一握りだけ残った常識のおかげかもしれない。

こうなったら常識論で対抗しよう。それしか道はなかった。


「いいか骸、日本では同性婚は認められていないんだ」
「それなら同性婚が認められる地で婚礼をあげるのみです」
「そ、それにオレまだ中学生だし」
「愛に年齢は関係ありません」


いや、この場合おおありだって。
骸には何を言ってもダメかもしれない。オレの言語能力はお世辞にも高いとは言えないし、それ以前にこいつの耳は都合の悪いことは一切はいらないようにできている。勝ち目はなかった。

ダラダラと冷や汗をかかずにはいられないオレに、骸は呆れたような声色で言った。


「いい加減あきらめたらどうですか?いつかはこうなる運命だったんですよ」


誰があきらめるか!オレは運命なんて信じない!
もはやそう言う気力さえなかった。

こうなったら親が反対さてくれるのを待つしかない。さすがの骸もオレの親に嫌われるようなことはしないはずだ…と考えてから脱力した。

あの母さんと父さんだ。笑って「愛があって幸せなら結婚相手に問題はない!」とでも言いそうだ。

沢田綱吉14歳。
同性に結婚を迫られたオレは今、人生最大の窮地に立っていた。









いつかはこうなる運命だったんだから
(それが早いか遅いかの問題…なのか!?)





 



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