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過去篇
5
「ん……」

―朝

私は布団の中で目を開け、寝っ転がったまま背伸びをした。

窓から入る太陽の光が少し眩しい。

私は目をこすりながら、ゆっくりと体を起こして布団から出た。

明るくなった部屋を見回す。

朝気持ち良く目覚められたのは、本当に久しぶりのような気がする。

私は大きく深呼吸をして、準備をし始めた。






「………」

零番隊舎へ入って一番始めに目に入ったのは、机の上に置かれた大量の紙だった。

手に取って見てみると、全て書類のようだ。

ご丁寧に筆まで墨まで置かれている。

「これが仕事か…」

私はとりあえず椅子に座り、書類を一枚一枚片付けていった。






「あれ…?」

最後の書類を見てみると、ちょこんとメモ書きがされていた。

「えっと…『読み終わって裏面の欄に丸を記入したら、十三番隊に届けて下さい』…」

裏面の欄を見ると、零番隊を除いて十三番隊の所だけ丸がされていなかった。

私は不思議に思いながらも、内容をしっかりと読んで丸を記入し、部屋を出る。


十三番隊舎に行こう、と思って改めて気付いた。

「十三番隊舎の場所…知らないんだった…」

霊圧を探ろうとするが、たくさんの死神達がいて全く解らない。

私は誰か知ってる死神に尋ねうと思い、適当に歩き始めた。






「あ」

数分歩いた所で、書類を抱えて廊下を歩いている死神を見つけた。

「あの…」

「?…はい…って、ぅわああぁ!!」

私の方を振り向いたかと思うと、死神は抱えていた書類を撒き散らして尻餅をついていた。

その顔は明らかに脅えている。

「……あの……」

霊圧は風来坊に抑えてもらっている。

ならば、この死神が私に脅えている理由はただひとつ。

この前の事件だろう。

「十三番隊舎は…どこにありますか…?」

ここままではいつまでたっても話が進まないので、とりあえず尋ねてみた。

「じ、十三番隊舎なら…ここ、この角を曲がって、ずっと行った所にッ…あります…!」

言葉を詰まらせながらも、道を指差しながら答えてくれる。

顔は脅えているままだが。

「ありがとう、ございます…」

私は礼を言い、散らばった書類を集める。

手渡すのは無理そうだったので、整えて床に置いた。

「失礼します…」

目を合わさないで会釈して、早足で未だに尻餅をついている死神を横切っていった。

「………ハァ…」

角を曲がったところで小さな溜め息をつく。

流石にあそこまで脅えられたら少し傷付く。

自分のした事なのだから仕方無い、と無理矢理心の中で納得させ、再び歩き出す。

『大丈夫かぁ?溜め息つくと幸せが逃げるぜ?』

「…そうなの…?」

そっと手を口に当ててみる。

そういえば、最近溜め息ばっかりついてるような気がする。

「だから嫌な事しか起きないのかな‐…」

『かもな‐』

風来坊と話をしていたら、自然と笑顔が溢れてきた。

「じゃあ、もうつかない」

『お好きなよ‐に』

「ふふッ…ありがと…」

『なんだよ…いきなり…』

「ん‐ん。なんでもない」

会話でこんなに心が軽くなるなんて、知らなかった。

もう少し話していたかったが、十三番隊舎に着いたので仕方無く話を終わらせる。

「えと…みょうじなまえです。浮竹隊長はいますか?」

部屋の奥まで聞こえるように、声のボリュームを大きくして叫ぶ。

奥の方で咳き込む音が聞こえ、少し間を置いて返事が返ってきた。

「入ってくれ」

「あ、うん…」

ゆっくりと襖(ふすま)を開けて部屋の中に入る。

浮竹は先程まで寝ていたのか、今は上半身だけ起こしている。

私は襖を閉めて浮竹に近付いた。

「どうしたの?体調、悪いの…?」

そう尋ねると、浮竹は笑いながら答えた。

「昔から体が弱いんだ。だから、ほとんど一日中布団の中って日もあるし…」

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