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過去篇
2
「えぇ。隊長位就任の方法は、隊首試験の合格、他隊長からの推薦と承認、現行隊長を一騎討ちで討つ…この3つです。あなたは他隊長からの推薦と承認をされています。なので…」

卯ノ花は私から羽織を取ると、ふわりと肩にかけた。

「あなたは堂々としていればいいのですよ」

「…はい…」

卯ノ花の笑顔を見ていると、なぎさんの笑顔を思い出す。

優しくて…暖かいあの笑顔…。

「あの…なぎさんは、見つかったんですか…?」

おそるおそる聞いてみる。

途端に卯ノ花の顔が曇り、見つからなかったのだと悟る。

「昨日、一日中探しましたが…見つからなかったそうです。…そして、捜索も中止することになりました」

「そんな…」

私は顔を伏せて呟いた。

卯ノ花はそんな私をなだめるように、頭の上に手を乗せて優しく撫でた。

「大丈夫ですよ。亡くなったわけではないのですから、また戻ってくるかもしれないでしょう?…その時、あなたがこんな顔だと、草間凪も悲しみますよ」

私は卯ノ花と目を合わせ、少し黙りこんで、小さく笑った。

「はい…!」

卯ノ花は満足したというような笑顔を私に向けて、扉の方を振り返った。

「さぁ、行きましょう。そろそろ式典も始まります」

「はい」

私と卯ノ花は、再び瞬歩を使って、式典会場となる一番隊舎へ向かったのだった。






「あ…」

「あ〜、あの時のお嬢ちゃんじゃないの」

一番隊舎の扉の前には、脱走した時に出会った、白い髪をした真面目そうな男と、茶髪の少しのほほんとした男が立っていた。

「お知りあい、なのですか?」

「あ、えと…脱走した時にちょっと…」

二人を見てみると、二人とも隊長格の羽織を羽織っていた。

「た、隊長さん…だったんですか…?」

「いや、俺達は今日からだよ。そういう君こそ…」

「あ、私も今日からです…」

私と白い髪の男が話していると、茶髪の男が割り込んできた。

「じゃあ同期ってことになるんだからさ、敬語はやめようよ。ボクは京楽春水。今日から八番隊の隊長になるんだ」

「俺は浮竹十四郎。俺は十三番隊の隊長だ。君は…」

二人に一斉に自己紹介をされ、覚えようと必死になっていたので、慌てて頭を切り替えて答える。

「わ、私はみょうじなまえです…じゃなくて…みょうじなまえ。今日から零番隊の隊長になることになったの…」

そういえば、敬語なしで話したのは初めてかもしれない。

「零番隊…?零番隊ってあの…」

浮竹が何かを言おうとしたが、その言葉は一番隊舎の扉が開く音によって、遮られた。

「さあ、行きましょう」

それだけ言って一番隊舎に入っていった卯ノ花を、3人は話すのを中断させて追った。


中には、隊長と副隊長が、中央を向いて並んで立っていた。

卯ノ花もその中に入る。

私は何も聞かされていないので、浮竹達の後ろをついて中に入った。

「皆、そろったかの」

後ろから、聞き覚えのある声が聞こえて振り返った。

そこには、一番隊であろう副隊長を連れた、山本総隊長が立っていた。

総隊長は、私達の横を通って、私達の前に立った。

「これより式典を始める。一昨日、瀞霊廷である騒動が起こった事は、存じておるな」

私の起こした事か、なぎさんが失踪した事か…はたまた両方の事かは解らないが、どっちにしても私に関係している事…。

表情が曇るのが、自分でも解った。

続けて総隊長が話をしていたが、全く耳に入って来ない。

私の起こした事が、浮竹や京楽にも、知られてしまう。

そうすれば、2人も私を軽蔑してしまうのか、と心の中で何度も繰り返される。

「…その戦闘力、その冷静さ、その他のあらゆる点から見て、その騒動の張本人である、みょうじなまえを零番隊隊長へ任ずる」

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