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過去篇
死神生活のはじまり
ふと外を見てみると、空は薄明るかった。

朝が来たのだろう。

私は赤火砲で作った炎を消し、ゆっくりと立ち上がった。

そして大きく深呼吸をし、頬をパンパンと叩いた。

式典は今日。

風来坊は処分されずに済んだのだろうか…なぎさんは…という思いが頭の中をぐるぐると回っている。

(なぎさんは、どこへ行ったの?何をしようとしてるの?…あの日、私に何を伝えたかったの…?)

夜から考えているこの疑問…考えたところで、誰も答えを知らない…。


知っているのは、なぎさんだけ…。


「お気分が、すぐれないのですか?」

「わッ!」

突然声をかけられ、心臓をバクバクさせながら後ろを振り向いた。

「う、卯ノ花隊長…」

卯ノ花は鍵を取り出して入り口の鍵を開き、中へ入ってきた。

「もう、式典が始まるのですか…?」

まだ太陽ものぼりきっていないのに、と心の中で思いながら、卯ノ花に尋ねる。

「いえ。しかし、その前に準備などがありますので。それと…」

卯ノ花は一本の斬魄刀を取り出し、私に差し出してきた。

薄暗くてよく見えないが、目を凝らしてみると、それが風来坊だということが解った。

「間に合ったんですね…!ありがとうございます!!」

私は風来坊を受け取って、頭を深々と下げた。

「あと、私達がつけておいた霊圧を制御している機械を外しますね」

卯ノ花は私の首に付けてあった首輪のような物に触れ、パキンと音をさせて破壊した。

破片は粉々に砕け、パラパラと床に落ちた。

霊圧が上がっていくのが解った。

なぎさんがかけた術はとけていないので、前の半分ぐらいに感じる。

「式典の時では、霊圧は抑えていて下さいね。いるのは隊長格の者ばかりですが、外には平隊員達もいますので」

「は、はい…」

私は慌てて霊圧を抑えようと神経を集中させる。

が、うまくいかない。

『ったく、世話が焼けるなぁ…』

私が困っていると、頭の中に風来坊の声が響き、私の霊圧を下げてくれた。

「それでは、行きましょう」

私は心の中で風来坊に礼を言い、前を歩く卯ノ花を慌てて追い掛けた。






「確か、あなたは瞬歩が使えるのでしたね」

「あ、えと…はい」

いきなり聞かれたので、返答に時間がかかってしまったが、卯ノ花は気にしない様子で、私の方を首だけ動かして見た。

「では、私の後を付いてきて下さい。少しでも時間が惜しいので…」

「は、はい…!」

私が返事をしたとたん、卯ノ花は瞬歩で消えたので、私も慌てて瞬歩で後を追う。

(すごい…)

さすがは隊長、と言うべきか、卯ノ花の瞬歩はとても速かった。

私も必死になって追い掛ける。

はぐれては卯ノ花に迷惑をかける、と思ったのだ。



突然、卯ノ花は大きな建物の庭の中で足を止めた。

私も慌てて止まったが、背中にぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさいッ…!」

「いえ、大丈夫です。それより…」

卯ノ花は建物に目を向けて言った。

「ここは四番隊舎です。中にあなたの服を用意してあります。入りましょう」

卯ノ花の後に続いて、私も四番隊舎に入る。

早朝だからか、中には誰もいなかった。

キョロキョロと見回していると、卯ノ花が奥からいつも死神が着ている黒い服と、隊長格が着ている白い羽織を持って来た。

「この黒い服は死覇装(しはくしょう)といいます。今すぐ着替えてください」

「は、はい…!」

私は卯ノ花に手伝ってもらいながら、10分ぐらい時間をかけて死覇装を着た。

丈の長さはちょうど良かったが、袖は私には少し長く、手を出すので精一杯だった。

そして私は、羽織を手に取った。

背中には、大きく"零"と書かれている。

「あの、本当に私…隊長になってもいいんですか…?その…試験みたいなのも受けていないし…」

卯ノ花は少し驚いた顔をしてから、またすぐに微笑んだ。
 

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