[携帯モード] [URL送信]
好きです【咲-Saki-】
--------------------------------------------------------------------------------


美穂子×久



「次に会うのは合宿所ね」


花火が終わり、部室を照らすのは月明かりだけ。テラスから部屋に入るのには明かりが不十分で暗く危ないので、久は美穂子の手を握っている。


「そう、ですね」


もう帰らなければならない。久の振った話題から感じたこれに、美穂子は淋しい気持ちになった。
あと少し、ほんの少しでいいから一緒に居たい。

待ってて。と言って久の手が美穂子から離れる。
小さく漏らした名残惜しむ声は久に届かず、久は部室を覆う闇に消えた。


「ごめんなさい、遅くなって」
こんなに暗くなるとは思わなかったの。

闇から姿を現した久は2つの鞄を手にしていた。


「いいえ。花火綺麗でしたし、沢山お話出来ましたから」
楽しかったです。

美穂子の言葉に久は有り難う。と言って、美穂子の鞄を差し出した。
鞄を手にすると言うことは帰ると言うこと。まだ帰りたくない美穂子は、直ぐに鞄に手を伸ばす事が出来なかった。
どうしたの?と首を傾げる久の胸に美穂子は飛び込んだ。

突然の事だったが久は美穂子を受け止めることが出来た。


「嫌なんです」


そう言って久にキスをした。
久は二人の鞄を落とし、目を見開いた。
なんの前触れもなくされたキス。どうしていいか分からずに居ると、ぎゅっと握られた制服から伝わる美穂子の震えを感じ、今美穂子が何を思っているかを感じ取り、落ち着くことが出来た。
そっと目を閉じ、美穂子の背中に手を回し背中を撫でる。
次は美穂子が目を見開いた。目に映るのは目を閉じて自分を受け入れてくれている久の顔。
自分が目を閉じている時、美穂子は久の嫌がっている顔を想像していた。拒絶されることを覚悟してした行為を嫌がるそぶりを見せないでいてくれている久の優しさが嬉しくて、美穂子は涙を流した。


「泣かないの…」


唇を離すと、久は美穂子をぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。


「どうしてこんな事を?」
「…、…」
「ゆっくりでいいから」
「…帰りたくなくて、寂しくて」
貴女が愛おしくて。

止まりかけていた涙を再び流して久を見る。
久は小さく笑って美穂子の涙を人さし指で拭った。


「私も福路さんの事、好きよ」
恋愛感情として。

言い終わると同時に、美穂子は久にキスをしていた。
好きの気持ちをいっぱい表わすつもりでしたのか、される側もさっきとは全然違うキスをしているように感じた。


「上埜さん、大好きです」


++++++
キャプテンって、愛情表現を行動で表す傾向がありますよね

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!