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悩み多き年頃ですから(光謙)
最近ふと思う、先輩との、差。
身長もテニスも勉強も、全部先輩の方が勝っていて。仕方ない事なんだって、わかっているのに。
一年間の差は、大きかった。
「光?」
「え、ぁ、はい?」
「大丈夫か?なんかボーッとしとったけど」
俺の隣を歩くのは謙也先輩。俺のダブルスのパートナーであり、恋人。
心配そうな顔を見たら、罪悪感がふつふつと湧いて来て、自然と口からすみません、と謝罪の言葉が零れた。
先輩は一瞬きょとんとしてから、くすくすと笑った。
「なんで光が謝るん?」
「あー…なんでですかね。」
「なんや今日の光おかしいわぁ」
「先輩よりかはマシですわ」
「なんやと!?」
やっぱり、先輩は面白くてからかいがいがあるし、可愛らしい。先輩が笑ってれば、俺も嬉しいし、先輩がさっきみたいな顔をしてれば俺も悲しい。
なんか、俺って結構先輩に影響されてて、依存してるのかもしれない。
「って光聞いてへんし…」
「あ、すんません」
「軽っ!」
「先輩先輩、」
「ん?」
先輩が隣にいる。俺の隣で、笑ってる。
そう考えたらさっきまでの一年間の差とか、すごくどうでもよくなった。
今俺と先輩が笑ってる、それだけでいいや。
「先輩は、笑ってて下さいね」
「ん?まかしとき!」
何となく、そんな事を考えたとある夏の日の帰り道。
夕日に照らされた陰は長く長く伸びていた。
20110707
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