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甘さ控えめ(幸仁)
(捧げ物)





日曜日、今日は部活がない為、久しぶりの休みを満喫しようと俺はベッドでごろ寝をしていた。
昼寝でもしようかと目を閉じるとタイミング良く携帯が鳴る


この着信音は幸村か、と瞬間的に分かってしまった自分がちょっと恥ずかしいと思いつつメールを見た

メールの内容はいたってシンプル

助けて。それだけか。

一体幸村の身になにがあったんだと不信に思い、電話をしてみた。





「もしもし、幸村?」



『ああ仁王、メール見てくれたかい?』



「どうしたんじゃ急に」



『いや、ちょっと色々あってね、今からうちに来れるかい?』



「今から?かまわんけど」





幸い特に出掛ける予定もない、俺は幸村宅に行く事になったのである。

この時俺はとても面倒な事に巻き込まれた、なんて、思ってもいなかった。











「ん、いらっしゃい」



「お邪魔します、あれ、親御さんは」



「ああ、俺以外みんな出掛けてるんだ」



「そ。」




靴を揃えてから家に上がる。(これくらいのマナーは出来んとな。)

部活やらなにやらで色々と忙しい為、幸村の家に来るのは久しぶりだった。
変わったのは多分、飾られた花くらい

リビングは優しい花の香りがした




「で、どうしたん」



「単刀直入に言うとね、手伝ってほしい事があるんだ」



「手伝ってほしい事?」



「お菓子作り」




ニッと笑った幸村。

本当に単刀直入だ。幸村らしいと言えば幸村らしい。
詳しく話を聞くと来週従兄弟の誕生日パーティーがあるんだとか。
そこで料理の上手そうな幸村がケーキを作る事になったらしい。


そこで、問題がひとつ。




「俺、正直言うとね、お菓子なんて作った事ないし、料理はめっきり駄目なんだ」



とのこと。

なぜ俺を呼んだ。



「え、だって仁王って弟さんいるし料理出来るかなって」




その法則で行くと幸村も妹おるじゃろ。
それに俺には弟もおるけど姉貴がいるし、料理は俺の担当じゃない。
お菓子なんて以っての外だ。




「まぁいいじゃないか。休日に二人で居られる事に代わりはないんだしさ」




いやまぁそうじゃけど、

俺がツッコんでられたのはそこまでだった。
ちょっと来て、と腕を引かれて連れて来られたのは綺麗なキッチン。
そこに綺麗に並べられた調味料と、……わさび?
ちょっと待て、砂糖に塩、バニラエッセンスまで来てなぜここでわさびが登場した。




「…ゆきむ、」




幸村、その手に持っているものはなんだ。
俺にはどっからどう見てもうずらの卵(しかもパック)なんだが。




「ああ、仁王。お菓子作りに卵は必要だったよね?」


「え、…あぁ、まぁ…」



「スーパーに卵買いに行ったら卵売り切れててうずらの卵しかなかったんだ。」



同じ卵だし、いいよね?
…いい…んじゃなか…?


奇妙な会話だとつくつぐ思った。





「で、何を作るんじゃ」



「本番はもちろんケーキなんだけどね、今日は簡単そうなカップケーキにしようと思って、あれ」



「ん?」



「カップケーキのカップ、あれでいいよね」




幸村の指差した方には比較的小さめの、鍋。
鍋?うん鍋。おかしいだろ。




「多分…できる、と思う…けど」



「そっか。じゃあさっそく始めよう」







そこからは本当のほんっとうに忙しかった。

ホットケーキミックスの粉に牛乳じゃなくて豆乳入れようとする幸村を止めて、いやまぁ豆乳でも多分大丈夫だと思うけど。
で、小さめの鍋にホットケーキミックス入れて牛乳入れていざうずらの卵入れたら卵足りなくて近所のスーパー二軒も回るハメになったり。


なにこれ、予想以上すぎる。
そりゃまあ中学生男子二人でお菓子作りなんて(しかも料理さえまともに作れないのに)無理があった。



途中で幸村にホイップクリームをホイップしてって言われたから幸村に「あの…なんだっけ自動でカシャカシャなる奴、ハンドミキサー?あれないん?」って聞いたらないって、ないって、えええええええ

そんで俺はひたすらホイップクリームをホイップしてましたよ、ええ
おかげで腕が痛い。




「に、仁王…!」



「あぁ…」




そしてついに出来たのだ。
巨大カップケーキ(仮)が。



「こ、ここまで長かった…」


「ホントじゃな、腕痛い、っちゅーか疲れた」




いや身体的な意味もあるけど精神的に。
今日は何回幸村にツッコんだだろうか。

…多分数えきれない程、だと思われる。




「さて、盛り付けしよっか」



幸村の言葉で我に返り、巨大なカップケーキを鍋から一旦外して適当な大きさに切る。
そこに今日一日の俺の集大成と言ってもいいホイップクリームをトッピング




「うん、見栄えも完璧」



「じゃな」




オシャレなお皿に載せられたカップケーキ(仮)はホイップクリームに彩られ、見た感じちょっとシフォンケーキみたいだ。
そこに幸村の紅茶が来ればもう完璧。
(ちなみに俺は幸村の煎れる紅茶が結構好きだったり)




「それじゃ、いただきます」


「ん」




フォークで刺した時の感触もいい感じ。あとは味だけだ。




「…おいしい」



「ホントだ。結構美味くできたね、良かった」




香ばしい香りと甘さ控えめのスポンジに甘いホイップクリーム
それと、幸村の紅茶。

…一カ所、わさびの味がしたのはきっと気のせいだと思う。




「今日は本当にありがとう、仁王」



「いや、結果的に美味いモン食えたし」



「そう、それなら良かった」



幸村はふ、と目を細めて優しく笑った。
次に瞬きをした時に目の前が幸村いっぱいで、離れてからああ、キスをしたのか、とどこか他人事のように感じた




「どしたの?」



「いや、なんでも」



触れただけのキスなのに、こんなに恥ずかしくてこんなにも嬉しいのはなぜだろう。

ほてった顔を隠す様に、そっぽを向いて紅茶を飲んだ。甘さ、控えめだ。

そうだ、顔が熱いのは、この熱い紅茶のせいだ。














甘さ控えめ

(それくらいが、調度いい)













*---

SALT様への相互記念小説でした!
大変長らくお待たせしました…!
「幸仁でギャグ」というリクをいただいたので私に書ける精一杯のギャグを書かせていただきました^^
ですがこれは果たしてギャグと言えるのでしょうか…(笑)

それでは改めて相互ありがとうございました*゚
これからもよろしくお願い致します。


11、5、28

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あきゅろす。
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