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あのね(光謙)




先輩はおしゃべりな方、というかおしゃべりだと思う。
今だってほら、




「でなでな、そこで急におかんが「昨日自分で捨てとったやろ!」って言うねん!でも俺はぜっったい…て、光?聞いとる?」



「はいはい、聞いとりますよ」




部活が終わって着替え途中な今。
他のメンバーが帰って静かな部室に聴こえるのは謙也さんの声と布の擦れる音


シャツに袖を通すと少しひやりとして、テニスで火照った身体には冷たくて調度よかった



シャツのボタンを閉めていると先程の話しを再開する謙也さん




「ほんで仕方ないからごみ箱見てみたら…!」



「…みたら?」




本当はしっかり聞いていないと悟られない為、最後の言葉をおうむ返し。

すると謙也さんは、くわっと険しい顔をしてオチを話し始めた




「あんねん!そこに!俺のノートが!!」




今まで話していた中で探していたのはどうやらノートだったらしい

今更な考えは頭の隅に追いやってぽつりとそうなんですか、と言っておく




「でも俺絶対捨ててないんやけどなぁ」



「謙也さんの間違いとちゃいます?」



「んー…そうなんかなぁ…いやでも、」





そう言ってまた話し出す謙也さんを余所に考える。



なんで謙也さんはこんなに俺に話しをするんだろう

別に俺以外にも人はいるのに。




俺がくるくる頭で考えていると謙也さんがまた口を開いた




「なんでやろなぁ」



「はい?」



「いや、俺っていっつも光にばっかこういう話するやんか」



「自覚あったんすね」



「ま、まぁな!」



「そこ威張るとこちゃいますからね。」



「そ、そんな事はええねん!で、多分俺な、」




そこでタイミングよく鳴る着信音。
慌てて出るあたり、かけて来たのは多分謙也さんのおかんだと思う。





「えぇー、あー、おん、わかった、わかったって!…はい、はい、はい、わかった、切るからなー。」




はぁ、とため息をつきながら携帯を閉じる。
どうしたんだか。




「光ー、すまん。俺買い出しせなあかんねん。一緒に帰れん」



「あぁ、別に平気ですから」


「おー…ホンマごめんな」




顔文字で言うこんな(`・ω・´)顔をしながらとぼとぼと着替える先輩
そんなに俺と帰りたかったんか、なんて。




「ああ、さっきの続きなんやけどな」



「あぁ。」



「多分俺、楽しい話とか嬉しかった話とか…全部、最初に光に聞いてほしいんやと思う」



「俺に、ですか?」



「おん。最初にっていうのが重要でな、他の誰かじゃダメ、みたいな。」



「そ、うなんすか。」



「おん。」




言ってる途中で恥ずかしくなったのか、段々語尾が小さくなっていった。

そんなの、聞いてる、しかも本人が一番恥ずかしいのに。




「おっ、俺、急がんと牛乳とか?う、売り切れる…かもしれへんからさっ、先行くな!」



「は、い。」



「そんじゃ、また明日、!」




段々と恥ずかしくなって来て、逃げるように去って行った先輩の後を追うように俺も足早に部室を出た。










あのね、あのね


(焦らなくても俺は逃げやしませんよ。)



11、4、25

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