[携帯モード] [URL送信]

box
逃避行(蔵仁)

※ちょっと痛い表現有り







ぺろり、

流れて来た赤い雫を舐めとる。

ああ、やっぱり血なんて美味しくなんてない
しょっぱいようで鉄臭くてこんなものを吸って生きる吸血鬼の気が知れない。




「し、らいし…なにして、」


「血、舐めとってる。」




少し強めに吸いつけば痛みに肩がひくりと震え、目をぎゅっとつむる姿は可愛らしい。

仁王が手首を切った理由?
そんなもの、考えなくたってわかる。




「逃げたいんやろ?」



「…え?」




そう。
仁王は死にたいんじゃなくて逃げたいだけ

この残酷な現実から、逃げたいだけ。



いくら俺達が愛し合っていても周りの皆が皆、俺達を理解してくれるわけじゃない

気持ち悪い、とか有り得ない、とか思ったってそれが普通。



だから仁王は不安で不安でしょうがなくて
いつか捨てられるんじゃないかとか
俺達には永遠なんてないんじゃないかとか
他にもたくさんの不安と焦りと罪悪感でいっぱいなんやろ?

仁王の手首の無数の傷と、何度も泣いた跡。
見れば見る程痛々しくて、悲しくなる。


仁王は寂しがりやだから俺と離れるのを怖がる。
俺だってもちろん寂しいし怖いさ。



こんな時、よく思う。
ああ、人間はなんて弱いのだろうと。

弱くて脆くて残酷で、とてもめんどくさい生き物。


そんな事を考えとる俺やって人間。
しょせん俺達を罵る奴らとなんら変わりのない同じ生き物だ



だからせめて、仁王だけはこれ以上傷つかないように、一人で泣かないように、俺はいい事を思いついたんだ。




「仁王、一緒に逃げようか。」



「…?」




首を傾げるその姿、ああなんて可愛らしい。




「誰もいない、俺達を罵る奴らもいない、そんな所へ一緒に行こうか」



「…白石……ごめん、…ごめんなさい」




なんで?
なんで謝るん?

俺に、こんな事を言わせてしまったと思っているのかもしれない。

ええんよ、これで。
俺達はなにも間違っちゃいない。




「仁王」




俺は手を差し延べた。
仁王は、泣きながら、俺の手を取った。



誰もいない所なんて、わからない。知らない。
もしそこまで辿り着いたとしても、どうする?
そこで生活でもする?

ああ、無理だ。


俺も、仁王も、わかってる。


もし途中で野垂れ死んでも、俺は構わない。
愛した人と一緒に死ねるなら。


仁王の手首の傷からはもう血は流れていなかった。




さて、























最高のBad endを、


(共に迎えよう。)






















*アトガキ*


久々の小説がこんなに暗いだなんて…!


11、1、8

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!