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甘い香りに(82)




「やぎゅー」



「仁王君」





日曜日の朝、インターホンを見れば銀髪の彼が立っていた




「おはよーさん」



「おはようございます。
どうしたんですか、日曜の朝に貴方が来るなんて」



「風呂貸して」



「はい?」



「じゃから、ふ・ろ・か・し・て?」




お風呂?




「一緒に入ろ」



「あの、仁王君。状況が掴めないのですが…」





私がそう言うと彼は片手に持っていた袋をずいっと私の目の前に差し出した





「入浴剤、うちじゃ使えんから。」




「だからわざわざ私の家へ?」



「そーゆー事ナリ」




あ、ちゃんとバスタオルとか持って来てるから。
と付け加える彼


(そういう問題じゃないのですが…)




「第一、今日は部活があるでしょう」




「ええじゃろ。間に合う様にすれば。
なんじゃそれともせっかく恋人が来たのに追い返すんか?紳士さんよ」





ニヤリと笑う彼に紳士精神が揺らぐ





「はぁ、わかりました。
お湯を入れるのでちょっと待っていて下さい」



「柳生、ありがとさん」





彼を家の中に入れて湯舟にお湯を溜める


(今日は朝から家族が出掛けていてよかった…)


家族がいて急にお風呂貸して、と恋人(しかも男)が来たらどうなっていただろうか

考えるだけでため息が自然と出た






「ふぅ…」



「やーぎゅ」



「……どうしたのですか。急に抱き着いて」



「一人にせんで」




「…誘っているのですか?」



「さぁ、どうかの?
ほらお湯溜まったぜよ」











着替えを準備してから着ていた服を脱ぐ

ちらりと見た彼の背中や腕は白くて、噛み付きたくなる




「柳生?」



「あ、いぇ、入りましょうか」



「髪、洗って」



「はいはい」





髪に水をかければふにゃりと普段の勢いをなくす

シャンプーをわしゃわしゃと泡立ててなるべく爪を立てないようにすると彼は気持ち良さそうに目を細めた




「流しますよ」



「ん、」




ザバーっとお湯をかけて終わり
トリートメントを付けようとしたらいらん、と一言。

普段からトリートメントは使わないようだ

(なのにこんなに髪が綺麗なんですね…。)




「次は俺の番な。」




髪を洗うのが上手いな、と思ってふと正面の鏡を見る

鏡に映る彼の腕や首筋。

あぁ、やはり白くて、噛み付きたくなる。





「流すぜよー」



「はい」





お互いの洗いっこが終わっていよいよ入浴剤を入れる


中学生男児が2人入るには少し狭い湯舟で向かい合わせに座る





「やぎゅ、入浴剤取って」



「はい、どうぞ」



「ん、ありがと。」





ピリ、と袋を開けてサラサラとお湯の中に入ってゆくピンク色の粉






全て入れ終えると湯舟はピンク色になった

お菓子のような甘い香りが鼻孔をくすぐる





「んー…いい香りじゃ」




両手でピンクに染まったお湯を掬って顔を近づける彼



「仁王君は意外と乙女チックなのですね」




私がそう言うと彼はムッとした表情をした




「意外と、ですまんかったな。それとコレは俺じゃなくて姉貴から貰ったんじゃ」




「あぁ仁王君にはお姉さんがいらっしゃいましたね」



「でもこの匂い家族が嫌いみたいじゃから使えんのじゃ」



「そうだったんですか」




(こんなにいい香りなのに)



そして彼をちらりと見ると彼はこちらを見ていた




「どうしました?」



「いや柳生が眼鏡掛けとらんの久々に見たなと思って」




「あぁ確かにそうですね」




「それと、」




「それと?」




「なんかエロいなぁ、と」




「…なら貴方の方が妖艶で美しいですよ」





銀色に光る髪、白くスラリとした腕に白い首筋、少し赤く染まった頬

どれをとっても美しい、としか言えない。




「欲情した?」




彼はニヤリと笑った。




「ええ。とても」





そして私は本能の赴くままに彼の白い首筋に噛み付いた




















入浴剤の甘い香りに、


(理性を溶かされて。)











「今日の部活は休むしかありませんね」



「真田が怒りそうじゃの」



「仕方ないですよ。
私の可愛い恋人が誘惑して来た、とでも言っておきます」



「……なら俺は偽紳士が襲って来た、とでも言うぜよ」



(互いが互いを誘惑した。)




















*アトガキ*


ずっと書きたかった82の入浴剤ネタ^^
きっと2人して逆上せちゃうよね(笑)

仁王は全部、計算内だったりして!


10、11、13

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