3 「っつ……!」 いった、い? そう思ったのは地面の上を滑った後で、なんか、意外なほど痛みはなかった。あれ? それはさておき、右手を見ればしっかりと箒を握ったままだ。よく離さなかった自分。それですぐに反撃とはいかないが。 立ち上がる間もなく足が襲ってきて、私は左腕で受け止めた。 勿論受け止めきれるわけはない、体を庇っただけだ。そこからは起き上がることもできない一方的な喧嘩となった。顔と急所はなるべく守っても、完全には避けれない。やはり痛みは少ないが怪我は負っている。 私に出来るのは顔を歪めないことと機会を窺うことくらいだ。それでも決して箒は手離さない。 これ、青痣だらけになってるかも。お姉ちゃんには見せらんないなぁ。 大して痛くないとわかれば、思考を飛ばす余裕も出てきてしまった。逆に少年達はちっとも痛がらない私にどんどん焦りを見せて、攻撃が荒くなっている。 「なんだこいつ……気持ちわりぃ!」 「くそっ、なんなんだよ……!」 確かに、これだけ殴られ蹴られで反応しないって相当気持ち悪いかも。自分で言っちゃった。 いやだって動く人形的なホラーだよそれ。市松人形みたいな。 散々やっても一度目以降呻き声すら上がらない。いい加減焦れてきた少年達の片方が、箒に目を付けたのか屈んで手を伸ばしてきた。 これは多分、チャンスだ。 私は箒を離さず、しかし力には逆らわずに立ち上がった。丁度、少年に立たせてもらった形になる。 これだけはやりたくなかったんだけど。 「このやろ、まだ立てぇう゛……ッ!!」 「た、田助ェェッ!!」 うわー、痛そ。 振り上げた私の足が吸い込まれたのは、所謂男の急所ってやつだ。今は私にもあるからね、悶絶する様は少し気の毒。 残る一人に箒を構え直し、にっこりと笑う。可哀想に彼の顔色は悪い。気持ちはわかるが容赦はしないよ? 一対一のコツは既に掴んだ。 「う、うわぁぁッ!」 けれど、折角気合いを入れたというのに少年は一目散に逃げ去ってしまった。情けない男だ。 追い掛けれるほど子供の足は速くない。 ちらと辺りを見回せば死屍累々。いや、三人だけども。多少は懲りてくれた、かな? ともかく、長居は無用とばかりに私はその場を離れた。 お姉ちゃんへの言い訳を考えるより先に、土下座させるのを忘れていたことに気付いたのは、帰り道での話。 報復は手段を選ばず (痛み分けってとこか) 20101027 [←][→] [戻る] |