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いつかに行った遊び場はその山の麓だ。あれから行ってないけど。

家屋は何軒かずつ点在してて、市に近付くにつれ増えていく。私が見た中で一番大きな屋敷は我が家から見て市の向こう側だ。
逆に市から離れていくと一気に田畑が増える。但し川沿いにはない。あまりにも近いと水害時に作物が流されてしまうから、だと思う。

と、まぁこんなところか。所要時間は健脚前提、多分平成に生きる一般人にはキツいくらい歩く。運動してる人なら別だけどね。

そのくらい自然溢れる道程だから、当然見晴らしはいいのだ。先にあるものに早めに気付ける程度には。


なるべく重い物は私が持つようにして、それでも手を繋いだまま歩いていた道の向こう。私もお姉ちゃんも、子供が何人か歩いてくるのは見えていた。
子供と言っても私よりは絶対上で、下手するとお姉ちゃんと同じくらいの年齢の少年達。

騒がしく笑い合ってた彼らの目がこっちを見て、うわ、嫌な予感。
けれど、道を変える程の理由もなく、お姉ちゃんに手を引かれるまま足を止めない。

対して少年達は歩みを止め、私達が近付くとあからさまに避けた。

「あいつらがそうなんだ」

「親がいないんだって」

「どっちも同じくらいに死んだんだろ?」

隠そうともしない声量。繋いでたお姉ちゃんの手に力が入る。心做しか早足になって、目線が下に落ちた。

「母さんが呪われてるんだって言ってた!」

「憑き物だってば」

「誰に? 親に?」

「あのどっちかじゃないか」

「うわーこえー!」

こいつら、うざい……!

私がそう思ったのと、お姉ちゃんの頭に血が上ったのは恐らくほぼ同時だった。きつく握り締められたのを感じた次の瞬間には、お姉ちゃんが大きく息を吸い込んでいて。

「貴方達、よくもそんなことを……!!」

張り上げられた声。怒りに染まったそれを聞くのは初めてだ。

「うわっ! 怒ったぞー!」

「ぎゃー呪われるー!」

相手がお姉ちゃんみたいな女の子だからか、彼女の剣幕を恐れもせずに少年達は笑いながら囃し立てる。すげーうざい。

けど、と一つ深呼吸をして、掴んだままの手を引いて注意を向けさせた。

「お姉ちゃん、早く帰ろ」

「でも!」

「子供になに言っても無駄だよ。ほら」

さっきとは逆に、私が手を引いて歩き出す。お姉ちゃんは納得いかないようだが、逆らうことはしなかった。

言っとくけど、腸煮えくり返ってるのは私も同じだからね。未だ聞こえる笑い声に、お姉ちゃんには届かないよう吐き捨てた。




最悪の気分

(冷静なのは見た目だけ)

20101021




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