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故に弊害





けほり、と呼吸が喉に引っ掛かった音。
電球というものが普及していない部屋は、どうしても普段より暗く見えた。それは私のテンションが底辺をいく故かもしれないが。

「移るといけないから、そーちゃんは向こうにいっててね」

「……はーい」

お姉ちゃんが風邪を引いた。お母さんの対応を見るによくあることらしい、お姉ちゃん身体弱かったのか。
原因というか一因になったのは先日の外出、なのかな。

こういう時、本当に子供の身体なことが煩わしい。看病は得意なのに遠ざけられてしまう。

子供って免疫力低いから、お母さんは間違ってないんだけどね。理解と納得は別物ってこういうことか。

という訳で、お母さんがお粥と氷を作ってる間に突撃敢行! 反抗期じゃないよ!

庭側から障子戸をゆっくり静かに開く。お母さんのいる厨は反対側だから、こっち側のが見つかりにくいはずだ。

そろりと部屋に上がり、また静かに障子戸を閉めてから真ん中に敷かれた布団へ寄る。
額に手拭いを乗せ眠るお姉ちゃんの顔は赤い。熱は一番辛い時期で、快方に向かっている証拠でもある。

私は安堵の息をひとつ。早い内に追い出されたので様子がわからなくて心配だったんだ。やっぱり自分の目で見ないと安心できない。

汗で張り付いた髪の毛を払ってあげて、そのままお姉ちゃんの頭を撫でた。

「……そー、ちゃん……?」

寝起きの掠れた声。瞼が少し持ち上がった。起こしちゃったかな。

「ごめん、おねーちゃん。ねてていいよ」

慌てて手を離せば、彼女は首を横に振った。えーっと、どういう意味?
寝ることへの否定か撫でていた手についてか少し悩んで、恐る恐るもう一度お姉ちゃんの頭へ手を置く。目が微笑んだので、これで正解らしい。

「そーちゃんの手、きもちー……」

流石の子供体温も熱よりは低いらしい。冷たくて気持ちいいんだろうな。

温くなった手拭いよりはいいだろう、と代わりに手を乗せて体温を奪い取る。早く良くなってね、と願いを込めてみて、恥ずかしいのでやめた。

再び静かになった部屋に、手をずらして目を覆ってやったらすぐに寝息が聞こえてきた。寝ちゃったか。

暫くはそのままでいてみたけど、廊下から足音が近付いてきたので手拭いを戻し、急いで静かに向かいの部屋へ逃げ込んだ。




ひっそりとお見舞い

(早く大きくなりたいなぁ)

20101001




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あきゅろす。
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