2 落ち着いていられるなら、普通を振る舞うのは簡単なのに。異端を隠し仰せられるのに。 だからこそ、心細くとも最初の一回は一人がよかった。私の精神状況に合わせて距離を取れるから。今となってはそれも無理なことだ。 お姉ちゃんは私を一人にはしないだろう。それなら私は最初から最後まで普通であるしかない。 そんな心の準備出来てねーよ、とは思っても外に引っ張り出されてしまったからには仕方ない。仕方ないんだ。 子供仕様の人見知りATフィールドよし、驚いても声を上げない口チャックよし。シスコンレベルMAXで後ろに隠れてれば何とかなる、はず。 そうやって精神のガードを固めている間に着いた先は、空き地というか、原っぱというか。それなりに広くて、それなりに雑草や花が生えてて、疎らに木が生えている。格好の遊び場。 既に遊びに興じていた子供達が数人、お姉ちゃんを見て駆け寄ってきた。 「ミツバちゃん!」 「あ、よーくん、けんちゃん、なっちゃん!」 男の子二人に女の子一人、皆お姉ちゃんくらいの年齢。彼女の友達か。 人見知り設定人見知り設定、と心の中で呟いて、私はお姉ちゃんの背中から動かない。 「あれ、この子だれー?」 「ミツバちゃんちの子?」 「そうだよ、私の弟なの。そーちゃんごあいさつしてー」 おっと、お姉ちゃんからのご指名だ。ここで渋るのは困らせちゃうだけだよね。 「そーご、です!」 ぺこりとお辞儀を一つ。よし、完璧。 「おー、そうごくんえらいねー」 「ミツバちゃんの弟ってことは、沖田そうごってことか。よろしくなー」 あ、今沖田って言った? それって苗字だよね? 実は私、自分の苗字は初耳だったり。収穫だ。誰かわからないけど多分よーちゃんかけんちゃん、に感謝。にっこり笑ってよろしくと返す。 「そーちゃんもいっしょに遊んでいいかなぁ?」 「いいよー」 「じゃあ木登りしようぜ!」 「危ないからだめ」 「えー」 なんかあっさり仲間に入れてもらえた。子供ってこんなもんだっけ。 心配は杞憂だったか、今のところ着物だらけという点以外違和感はない。いや、街灯も電信柱もないけどね。これなら前世の凄い田舎みたいな感じ。 これなら子供らしさを忘れなければ大丈夫だろう。ちょっと安心した。 「なら鬼ごっこは?」 「それにしよう!」 「けんちゃんが鬼ね。そーちゃん、逃げるよ!」 「あ、お姉ちゃん待って!」 ……子供、癒されるなぁ。自分がその一員なことから目を逸らしてそう思いながら、お姉ちゃんを追い掛けた。 20100930 [←][→] [戻る] |