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落ち着いていられるなら、普通を振る舞うのは簡単なのに。異端を隠し仰せられるのに。

だからこそ、心細くとも最初の一回は一人がよかった。私の精神状況に合わせて距離を取れるから。今となってはそれも無理なことだ。

お姉ちゃんは私を一人にはしないだろう。それなら私は最初から最後まで普通であるしかない。

そんな心の準備出来てねーよ、とは思っても外に引っ張り出されてしまったからには仕方ない。仕方ないんだ。

子供仕様の人見知りATフィールドよし、驚いても声を上げない口チャックよし。シスコンレベルMAXで後ろに隠れてれば何とかなる、はず。


そうやって精神のガードを固めている間に着いた先は、空き地というか、原っぱというか。それなりに広くて、それなりに雑草や花が生えてて、疎らに木が生えている。格好の遊び場。

既に遊びに興じていた子供達が数人、お姉ちゃんを見て駆け寄ってきた。

「ミツバちゃん!」

「あ、よーくん、けんちゃん、なっちゃん!」

男の子二人に女の子一人、皆お姉ちゃんくらいの年齢。彼女の友達か。
人見知り設定人見知り設定、と心の中で呟いて、私はお姉ちゃんの背中から動かない。

「あれ、この子だれー?」

「ミツバちゃんちの子?」

「そうだよ、私の弟なの。そーちゃんごあいさつしてー」

おっと、お姉ちゃんからのご指名だ。ここで渋るのは困らせちゃうだけだよね。

「そーご、です!」

ぺこりとお辞儀を一つ。よし、完璧。

「おー、そうごくんえらいねー」

「ミツバちゃんの弟ってことは、沖田そうごってことか。よろしくなー」

あ、今沖田って言った? それって苗字だよね?

実は私、自分の苗字は初耳だったり。収穫だ。誰かわからないけど多分よーちゃんかけんちゃん、に感謝。にっこり笑ってよろしくと返す。

「そーちゃんもいっしょに遊んでいいかなぁ?」

「いいよー」

「じゃあ木登りしようぜ!」

「危ないからだめ」

「えー」

なんかあっさり仲間に入れてもらえた。子供ってこんなもんだっけ。

心配は杞憂だったか、今のところ着物だらけという点以外違和感はない。いや、街灯も電信柱もないけどね。これなら前世の凄い田舎みたいな感じ。
これなら子供らしさを忘れなければ大丈夫だろう。ちょっと安心した。

「なら鬼ごっこは?」

「それにしよう!」

「けんちゃんが鬼ね。そーちゃん、逃げるよ!」

「あ、お姉ちゃん待って!」

……子供、癒されるなぁ。自分がその一員なことから目を逸らしてそう思いながら、お姉ちゃんを追い掛けた。




20100930



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あきゅろす。
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