弱ペダ小説 桜咲いて…(新荒) 箱根学園の卒業式、自転車競技部での打ち上げも終わり、俺たちは寮生活最後の時を噛み締めていた。 新「みんな、明日にはここを離れちまうんだな」 いつかは会える、そう思っても、行き場のないモヤモヤだけが、心を重くさせた。 荒「仕方ねェじゃねェかヨ」 俺の片思いの相手は意外にもしれっとしていて、3年間同室だったとは思えない口ぶりだ。 荒「いつかは来ちまうもんだろ、別れなんて。明日も早いんだからもう寝ろ」 新「ああ、分かったよ靖友」 本当はもっとお前と話がしたい。渦巻く感情を抑えて、俺は眠りについた。 翌朝、目が覚めると靖友の姿はなかった。きちんと畳まれた布団が、まだここに居ていいんだと言っている様に感じた。 新「おはよう、泉田」 泉「おはようございます、新開さん」 廊下に出れば、おはようと挨拶してくれる。いつもと変わらない朝のようだ。 外は、春の先駆けだというのに、強い日差しが痛かった。そんな日差しの中、靖友はロードに乗っていた。 荒「ンだよ。今さら起きたわけェ?」 大好きなその口調も聴き納。俺は大好きな靖友の、唇を奪った。 いきなりで驚いた靖友は、肩をビクンと跳ねさせ、逃れようと必死で腕で押してきた。 そんなところも可愛くて、大人しく離れた。 新「ゴメン…。嫌だったよな」 少し冷静になってから、靖友に頭を下げる。 痛いげんこつが来るかと覚悟を決めていたが、黙ったまま俯いている靖友に、心配になって顔を上げた。 荒「だ、誰が嫌なんて言ったんだヨ…///」 新「いいのか…!?」 思わず靖友の手を握る。強すぎたのか、靖友の顔が一瞬苦痛に歪むのが分かり、慌てて手を離す。 新「ご、ゴメン!」 荒「ったく…、力加減を考えろよ」 そう言うと、靖友は片方のポケットに手を入れ、何かを取り出した。 荒「ん…。やるよ、これ」 突きつけられた手の平には、ハートのキーホルダーがあった。真ん中からギザギザに割れていて、2つで1つになっている。 新「え、いいの?でもこれ、2つあるけど」 左にはH、右にはYと彫られていた。それも、誰が見ても後から彫られたものだと分かるほど歪に。 荒「っ、間違えたんだよ!//」 靖友は、俺に渡したばかりのキーホルダーを奪うと、もう一度、今度は片方だけ渡して来た。 荒「お前がY、俺がHだ」 新「あ、これってもしかして、お互いのイニシャル…」 隼人のH、靖友のY、全て辻褄が合う。だが、なぜ互いに相手のイニシャルの方を?また渡し間違えたのか? 荒「これで、離れてても一緒…だろ?//」 新「靖友…!//」 荒「……俺に、言うことあンだろ//」 新「え…?あ、キーホルダーありがとう」 荒「違ェよ!あァ、くそっ!プロポーズだろボケナス!!///」 新「俺と付き合ってください!」 荒「…遅ェんだよ…//3年間も待たせやがって…///」 新「じゃあ、靖友も…俺のこと…」 なんだ、始めから両想いだったんじゃないか。 荒「うっせ、自惚れンな!//」 新「このキーホルダーを持ってるかぎり、どこに居ても一緒、いつまでも」 荒「あァ、そーゆーことだ…」 恥ずかしそうにそっぽを向く靖友。遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。 新「…じゃあな、靖友」 荒「おう、待たな、新開」 俺は、桜が咲き始めた初々しい木の下で、初めてのプロポーズをした。一生忘れない、忘れてはいけない、素敵な瞬間だった。 ミズキさん、リクエストありがとうございました。新荒で書かせていただきましたがよろしかったでしょうか。またのリクエスト&ご訪問お待ちしております。 [*前へ][次へ#] [戻る] |