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Short Novel
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私には親友がいた。
名前は沙希。

家も近くて小中高と同じ学校だった。

沙希は優しくて
いつも自分より他人を優先させるような子だった。

私達は、ずっと友達だと思っていた。






私は高1の春、好きな人ができた。
一つ上の先輩。
一目ぼれだった。

サッカー部で背が高く優しくて、皆の憧れだった。

私は、サッカー部のマネージャーになった。
一人だと心細いので沙希も誘った。

沙希はテニス部に入りたいと言っていたけれど、半ば強引に加入させた。


先輩と近づきたかったけど、それは難しかった。

たくさんライバルがいて
先輩のマネージャーが私達を近づけようとしなかったし、ちょっと話すだけでも先輩の目が光った。

そんな難しい状況だったけど、私は先輩のことをドンドン好きになっていった。

だけど
先輩は好きな人がいた。


沙希だ。

沙希と先輩は、そんなに親しくも無かったのに−。


先輩から告って、沙希はOKした。


「なんで?!私が好きだって知ってたじゃん?!」

私は沙希に詰め寄った。

「ごめん・・。でも私も本当は好きだったんだ」

むかついた。

「もういい!そんなん友達じゃない!絶交だから!」

私達は話さなくなった。
いや、話さないというより、一方的に私が無視をしている状態。


沙希は、先輩にも目をつけられ居場所がなくなって部活を辞めた。


その内、学校にもこなくなった。
先輩のこともあったし、何より大人しい沙希は、イジメの対象になっていたからだ。

私は少しだけ心が痛んだ。
だけど、今更何も言えなかった。

2年に進級するとき、沙希は学校を辞めた。




後から聞いた。
沙希は妊娠して先輩に捨てられたと−。

私は、いい気味だと思った。



沙希は家を出て子供を生んだ。
そんなことを風の噂で聞いた。

・・だからって別に。
関係ない。



3年に上がり受験勉強真っ只中になった。
沙希のことも忘れていた。


なのに。


「優ちゃん」
沙希が私の目の前に現れた。

「優ちゃん。ごめん」

「・・なに?今更?」

私は追い返そうとした。

「ごめんね。許してくれないって分かってる。
でも・・もう一度謝りたかった。それだけが心残りで−。
本当にごめんね」

「バカじゃない。あんたなんか、死んでよ!」

私は冷たく沙希に言い放った。

沙希は悲しい目をしてた。




沙希は本当に私の言う通りにした。
マンションから飛び降りた。

沙希は子供を抱えながら一人で生活していた。
慣れない生活に、知り合いも一人もいない状態で働きながら子育てをし、疲れ果て、ノイローゼ気味だったと聞かされた。



沙希の意識が戻らないまま1週間が過ぎた時
沙希の母親から携帯を見せられた。

それは未送信BOXに入ったままのメール。

『優ちゃん。ごめんなさい。
私、優ちゃんを傷つけたよね。
でも、優ちゃんを無くしたくないんだ。
優ちゃんは私にとって大切な親友だから。
また、話せる日がくるよね・・?』

日付は1年前だった。
ずっと押せなかった、送信ボタン。

私は、泣いた。
声を押し殺して泣いた。

何で、分かってあげられなかったんだろう。
沙希も先輩が好きだったのに。
でも、先輩に捨てられて。
辛かったに決まってる。

もしかしたら、沙希は救いが欲しかったのかもしれない。
だから、私のところにきたんだ。
でも、私は言ってしまった。

『死ね』と。


私は後悔した。
沙希を本当の意味で失いそうになって初めて気付く。
何で、助けてあげられなかったのだろうか、と。


ごめん、ごめん・・。
何度も、そう呟いた。

そして
『子供いるんだから、死んだりなんかしたら
絶対許さないから。起きたら、許してあげるからね』
と眠ったままの沙希に語りかけた。


沙希は眠ってる。
二年経った今も。


私は、沙希の病室へ向かう。
花を入れ替える。

「沙希、良い天気だよー」
そう語りかけた私の横には小さい子供。

私はいつものように沙希に昔話をしてあげる。


その時。
沙希の指が動いた。




私は思う。
沙希と、また一緒に話せる日がくるのは
そう遠くはないと。

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あきゅろす。
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