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Short Novel
カレーライス
ちょっと、辛めのカレーライス。

俺がカレーは辛い方が好きだ。って言うと

「辛いの苦手」

と言いながら俺好みの味にしてくれた君。

君の舌では、辛いはずなのに
いつも、我慢して食べてたんだろう。

カレー好きな俺のために、週に1度カレーを作る君。

カレーにハチミツを入れていた君。

いつも俺に

「味見して」

って小皿にカレーを少し載せて味見をさせる君。


二人だけで食べるには
いつも多すぎて。

カレーライスが続く日もあった。



俺には母親がいなかったから
君のカレーライスがお袋の味みたいなもんだった。

そんな君のカレーを食べるのが大好きで
カレーの日は、いつも嬉しかった。




ある日、喧嘩をした。

君は黙って家を出た。

どうせ、すぐ帰ってくるだろう。
そう思っていたのに

君は、次の日も
その次の日も

帰ってはこなかった。


3日後、仕事から帰った俺は、匂いに気付く。

カレーライスの匂い。


君は何も言わずに

「おかえり」

って笑ったね。

どうして、あの時
素直に言わなかったんだろう。

「ごめんね」の一言が言えなかった。


君が、ずっとカレーライスを作ってくれると思っていた、バカな俺。




今、君は
俺のためじゃなく、子供たちのためにカレーライスを作っているだろう。




俺の知らない男と結婚した君へ。


俺は、今
インスタントのカレーを食べている。

君が作るカレーとは違う、味気ないカレーを食べている。

俺は君の作るカレーライスを食べることは

もうない。


もう一度だけ

時間が戻るならば

君に
「ごめんね」と言うよ。

「ありがとう」と言うよ。

だから、もう一度

俺のために、カレーライスを作ってくれないか。


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あきゅろす。
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