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家庭学習



「待て。」



やけに色っぽく聞こえたのは呪いのイヤホンのせい。



「……何も言わずに上がれ」



何か言わざるを得ないんですが。
土方は、顔を私から背けて中へ私を促した。



とりあえず私は、言われるがままに土方さん家に上がった。土足で。



「ここは外国かよ!?」


『何言ってんだ?日本だすよ?』


「じゃあせめて日本語を喋れ。日本語を。そして靴を脱げ。」



渋々、本当渋々に靴を脱ぎ、テーブルのある部屋まで行き、私と土方は向かい合って座った。


沈黙が痛いんだが。


耳に痛い心に痛い目が痛いッ。



『あのー…』
「あのよ」



私他のお宅に届ないと…。
…と言おうとしたら、ドラマみたいなタイミングで被った。

クソッ



「…お前から言えよ」


『いや、早く帰りたいだけだから』


「本当に言うかよ。ここはフツー「土方さんからどうぞ」とか言うべきだろ」



うわー…。



「何か、その引き方若干傷付くんですけど!!…たく…調子が狂いやがる。」



もういい、と言いた気に何かを私に突出した。



「ベランダに落ちてたんだが、女モンだからよ……あ!!そういう意味じゃなくて…」



突き出されたのは、キャミソールだった。
そう、私の。



『あ』


「その…よ、すまねえ」


『ありがとゅうううあいいあ!!』


「ええぇ!?」


『無くしたかと思った!!大事にしないと師匠(せんせい)に怒られるから、ありがとう!!』



私は、綺麗に畳まれたキャミソールを受け取って、嬉しくてニコニコしながら礼を言った。



『ちゃんと洗濯バサミで止めないとね。土方ありがと。今度何か奢るわー。あ、いけね。こんな時間。次は坂田さん家だ〜めんどぅー』



ブーブーと愚痴を垂れてると土方が、「坂田」って誰か知ってるか?ニヤニヤしながら聞いて来たので(気持悪いと思いながらあえて言わずに)私は首を横に振った。



『でも、銀ちゃんと同じ名字だよなー親戚だったり?』


「さぁな」



とだけ言って、「隣りなんだし、何かあったらすぐに俺を呼べ」と言って土方とは別れた。



とりあえず、斜め下の「坂田さん」を気にしながら、カンカンカンと古臭い階段を降りた。


そしたら、いた。



坂田さんが。



「あれー千緒ちゃん、土方君と密会?先生はクラス内の男女交際は許せないっつっただろー。あ、先生との交際は可だから。」


『ハッキリとお断りします。そして死ね。』


「千緒ちゃん、お母さんに"死ねとかいっちゃいけません"って習わなかった?出来れば習って欲しかったなー銀さん的に」


『知るかぁああぁあ!!』


「邪魔」



不意に背後から低い声。
振り向いたら、片目眼帯の人が。



「誰だ、お前」


『叶音…千緒…です。…あ、引っ越して来ました…その…これ』



タオルを突き出すと「銀八にでもやっとけ」と言って坂田さん…否、銀ちゃんの家の隣りに入っていった。



『あ…じゃあ、ハイ、銀ちゃん』


「あ…ども。…じゃなくて、高杉の奴珍しいなー」


『うちの制服着てたね』


「あーアレ、うちのクラス。家にもたまにしかいねーんだよなー。」


『ふー…ん』



学校に来ない→眼帯→病弱→家にもいない→入院生活を余儀なく…



『お見舞いしなきゃ!!顔色悪かったもん!!』


「はァ?どーしたの?千緒ちゃん」


『高杉君は、大変なんだよ!!』



そういう私は、飛び帰った。


「馬鹿な女」



高杉は、扉越しに聞こえる千緒の声に口角を上げ、クツクツと喉を鳴らした。


置いて行かれた銀八は2つのタオルを抱えて、千緒が2段越えで上がってった階段を眺めて、長い溜め息をついた。





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