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下校も授業



「何でィ、その顔は」



何故かそいつ、沖田は不貞腐れたみたいに唇を尖らせて目を逸らした。

私はつい、その唇が色っぽいとか思ったんだが、言えないな。



『沖田さんこそ、どしたのさ。』


「総悟」


『…そおご?』


「そ。名前。俺の」



沖田――総悟はちぐはぐな日本語を述べてニィッと笑った。

少年っぽい幼さの残る顔。
へえーそゆ顔するんだ…とか思ってた。



「何見てんでィ、エローイ」


『エローイじゃねええええ!!』



前言撤回。
可愛くないです。
神様、このサド王子を抹殺する権利を下さい。


そんな事を拝んでたら、ふと気になった事があった。

彼は何故ここにいるか。




「家こっちだから」



『へえー…………って何?何で私の心の声に答えてるの!?』


「お前やっぱおもしれえー」


『てか家なの?ここ』



ここ中庭やん!!
え?家?中庭?家なき子だ!!

頭に流れるあの有名な曲と有名な台詞。



『同情するけど金はないからね!!』



そう叫んだ私は、いつのまにか正門までダッシュしていた。


残された沖田が、真っ黒い笑顔を浮かべてた事は知らない。







正門までダッシュした私は、ちょうど正面玄関を出た妹、万緒と鉢合わせになり、流石双子〜とか思いながら帰路についた。

今日1日、色んな事がありすぎて頭が回らない。
とりあえず帰ったら寝よう。



「布団も敷けないくらい、まだ片付いてないのに?」


『おおレレパシー。』


「テレパシーだから。」



そうだ。引っ越したばかりだった。
だから、まだ段ボールハウスな我が家に…いやそういう意味じゃなくて。総悟と一緒にするな。
とにかく、段ボールだらけな家では、まだとても寝られない。


「じゃあ、私家を片付けるから、千緒はご近所さんに挨拶しといてよ。」


『へいへーい』



会話もほどほどに我が家である、"日暮壮"に着いたのは、学校から歩いて20分程だった。


挨拶と言っても、手ぶらじゃ申し訳ない。
だから、予め買って置いたタオル(熨斗で包んでます)を分捕り、代わりに鞄を玄関にブーメランのように投げ入れる。

万緒に怒鳴られたが、途中でバタン、とドアが閉じた。


私は、とりあえず隣りの【土方】さんの家に行くことにした。



………………ん?
土方?…つちかた?ヒジカタ?


つちかた?


首をかしげる暇もなく、隣りにすぐ着いた。

ちなみに、この"日暮壮"にはインターホンなんて高級な代物はない。

だから、ノックです。



コンコン、コンコン、コンコン。


返事がない。


コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン。


やっぱ返事がない。


『つちかたさーん。い(きて)ますかー。』


バンバンバンバン!!

最早叩く。


やはり返事はない。


『しゃーねえな』


蹴りを入れようとしたその時!!


ジャストなタイミングでその蹴りを止めた人物がいた。



「なッ!!俺ン家で何やってんだテメェ!!」



『放せええ!!つちかたさんが死んじゃううう』


「まじでか!!……て、お前、叶音か?」


『……?土方君!!家間違えてるよ!!…漢字一緒でも、"つちかた"…………あ。』



私は、自分が間違えてる事に気付き、顔を伏せた。
そしたら、土方君が溜め息を1つついた。

多分、呆れられたかなあ。

そんな事を思いながら、顔を上げると、土方君は



『置いてかれた』



姿を消して居た。
否。家に帰ってた。


少し、泣きたくなった。


タオルをドアポストに詰めてやるッ!!コノヤローッ!!



タオルをドアポストに詰めてたらドアが開いた。
鼻が勢い良くぶつかった。

折れたんじゃね?



「あ、わり」


『びじがだぐんだんがじべええ(土方君何か死ねええ)』


「ちょッ悪かったって!!」



必至で謝る土方君…いや土方に優越感を覚えた。



『じゃあ、今度何か奢れ土方』


「おう………て呼び方、呼び捨てになってるよな?今ぜってーお前の中で俺が格下になったよな?」


『………ふ』


「蔑んだ目で笑いやがったああああ!!」




そんなやりとりもほどほどに、私が次なる目的地に行こうとした時、土方が私の腕を掴んだ。


掴んだ腕を通して伝わる暖かいのは、きっと気のせい。


でも、顔を赤らめる彼を見てると、気のせいじゃないと確信せざるをえなかった。





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