クラス発表
春の暖かな空気が頬を撫ぜる。
その空気はいつも毎年感じるよりも少しだけ特別。
『えへへぇ』
「どしたの千緒、気持ち悪い」
『だって、昨日から始まった姉妹の2人暮らしに、人生で最後の学生生活の春だよ?しかもクラス発表!!ワクワクしないほうが異常だねー』
「ま、そうねえ」
私達姉妹は、去年…いや、つい先日まで両親が幼い頃他界したために施設で生活していた。だが、突然やってきた伯父さんに引き取られ、その伯父さんの意向で姉妹仲良くアパート暮らしが始まったというわけでして。
『私、Z組になってみたいんだよねー。今までB組だったし。』
「でも、Z組って毎年メンバー不動じゃん。」
『銀ちゃんに予約しといたッ』
「どんな予約?」
私達は双子だ。
見た目は髪型以外に見分けが付かない。性格は姉は天然で妹はしっかり者。そんな私達は銀魂高校に通う3年生だ。
桜舞う銀魂高校の校門。
黙っていれば絵になる。
「お妙さん…またいっsぶごぉッ」
クラス表に張り付けられたゴリラはズルズルと涙と唾液をクラス表に擦り付けながら落ちて行く。
「近藤さん、アンタの液で印刷文字が滲んじまったァ」
「おお、すまんな」
「近藤さん、委員長としてそこは謝るなよ。」
「何でィ土方コノヤローもまた一緒かよ死ね。死ね」
「今死ねって2回言ったよな?よぉーし竹刀出せぇえええ!!」
「朝から騒がしい人でィ」
風紀委員通称「真選組」は朝から風紀を乱していた。
一方双子は、前方の風紀委員に邪魔されてクラス表が見られずにいた。
『うーあー見えねえ』
「だねー。きっとZ組の人達だよ」
2人が背伸びしたり、ジャンプしたりしていると、姉千緒の肩を誰かが叩いた。
「あの…叶音…千緒さんだよね?よろしく。Z組で、同じクラスなんだ。」
キター――――――――
と、千緒の顔が煌めいた。
でもすぐに疑問符がいくつか浮かぶ。
『あなた、誰?』
「山崎。山崎退です」
『…………山崎…なんだっけ?』
「…え…退…」
『…え?曲がる?』
「いやだから、退…」
『あー祟(たたる)か。おぞましい名前だね。親のセンスが疑われるね。よろしく』
「祟ってそんな可哀相な名前つける親いるかよ!!てかアンタの耳がおぞましいよ!!」
『てゆか、よくうちら見分けたねー』
「人の話聞け」
千緒が山崎と不毛のやり取りをしている間、万緒は自分の名前を探していた。
「あーうるさー煩くて目まで見えなくなってきた」
「独り言たァ、怪しい女。」
「煩くて幻聴ですか?」
「アンタ名前なんて言うんですかィ?」
「私?」
「アンタ以外に誰がいるんでィ」
「叶音…万緒」
「……………」
名前を言うとソイツは目を流して探す。そして「俺の隣りのクラスでさァ」と言った。
「てか貴方は何組?」
「Zですねィ。アンタの姉貴と同じクラスでさァ」
「ありがとうございます」
「どーいたしまして」
「名前教えてくれませんか?」
「教えてほしけりゃ土下座して頼みな」
ニヤリ、と笑った。
それだけで万緒の心臓は飛び跳ねた。
『万緒ー教室行こう』
千緒と万緒はワクワクしながら校内に入って行く。
これからの生活に期待して。
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