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 高校生というものははたしてこうも面倒だっただろうか。

 ぼんやりと授業を聞きながら思う。窓から外を見れば素晴らしい快晴。太陽ももう直ぐでてっぺんに登る。いい天気だな、ほんと。ちらりと隣りを見れば必死にノートを取る影野くん。英語だもんね。板書してる杉田先生に視線を移せば今の授業内容にげんなりした。既に習った内容な上に、専門でやっていたのだ。でも杉田先生の授業は解りやすいからみんなが羨ましいわ。わたしの英語担なんて英語以前に字が汚すぎて読めなかったからね。
 軽く息を吐いてもう一度外を見た。窓から見えるのは第一グラウンド。体育の授業中らしく男子生徒がサッカーをやっている。女子生徒も応援に熱を出していた。すると男子生徒が一人、綺麗にシュートを決めた。開いていた窓から聞こえるのは言わずもがな女子の歓声である。

(うっせ…)

 溜め息を吐く。賑やかなことだねえ。若いって羨ましいわ。なんて思って、超次元ではないシュートを決めた人物を目で追った。くるり、彼が振り向き不意に此方を見上げた。

─ぱちり、

 視線が絡む。ぱちぱちと瞬きをすれば彼はもう此方を見てはいなかった。気のせいだろう。しかし誰かに似てたような。そう思い視線を杉田先生に戻せ、

『…Hi,Mr.Sugita.』

「神谷、今は英語で僕の授業中だね。…この段落、全訳して自分なりに解釈してきなさい」

 目の前にいた杉田先生の眼鏡が全反射キラーンとなったのは気のせいじゃない。頷いた直後に鐘が鳴った。「今日はここまで。神谷はちゃんと解いてこいよ」解ってますとも。余所見していた罰が下った。先生意外と厳しい。

「…大丈夫?」

『大丈夫、大丈夫。影野くんこそ解らないとこあったら聞いて』

「うん。…余所見なんて珍しい」

『体育の授業やってたから。あと女子の歓声すげえなって』

「ああ、なるほどな。さっき体育だったのは確か…「知世!」…小野」

 影野くんと喋ってたら陽がフレームイン。「あたしあんたが作ったメニュー杉先に報告行くから今日は一人で飯って」『ほいほーい』陽さん新幹線より速いトークで影野くんに喋らせなかった。流石です姐さん。仕方無い、さっさと教室行こう。

「神谷さん…一人なら俺達と一緒に食べるか?」

『………ごめん、また誘って。陽も一緒に!』

「そうか、わかった」

 弁当の入った包みを持ち、例の教室に向かう。影野くんには申し訳無かったが、わたしの耳には聞こえていたのだよ。「俺『達』と」そう!はっきりとね!!俺達──即ち複数、影野くんは未だサッカー部らしく、彼以外のメンバーはサッカー部である確率は限りなく100に近い。
 もしその場合……初めましてから始まり少なからず宜しくに行き結果ファンクラブから「なんであんたがサッカー部と仲良くしてんだよ!」はいはい、死亡フラグ死亡フラグ。穏やかな二度目の高校生ライフの為だ。影野くんごめん。

─ガラッ

 相変わらず殺風景だな。机と椅子、後は鍵付きロッカーにわたし達が持ち込んだものが置いてあるくらい。杉田先生は「見つからないなら置いてていいぞ。僕も昔やったしなー」と。因みに先生のDSも置いてある。いいのか教師、とか思ったが「ちょっと校則破ってこそこそするのも青春の一種だ!」胸を張って下さった。
 ロッカーからスケブを出してお絵描きしながらご飯を食べる。…行儀悪いことくらい解ってる!でも無性にお絵描きしたくなることがあるだろうよ!適当にようjy…幼い女の子を描きニヤニヤしてみる。わあ自分気持ち悪い。

─ガラッ

「!…先客か」

─サッ!パタン!スッ‥

 黄色い閃光の如く扉が開いたと同時に素早い動作でスケブを閉じ机にしまった。…ふぅ、危ない。こんなの見られたらわたしも陽も(勿論、杉田先生も)オワタ\(^o^)/だ。それだけは勘弁頂きたい。
 声がした入り口から誰かが近づいて来るのがわかり、心を無にする。漸く落ち着いた頃に目の前にジャージ。なんとなく顔を上げた。

「ここ使ってもいいか?」

(オワタ\(^o^)/)

 目の前にいたのは、有名な炎のストライカー──豪炎寺修也でした。…‥へ、あ、ちょ?よく理解出来ていないのですがね。『…はい?』聞き返してしまった!箸を置いて彼を見上げた。

「…ここで着替えてもいいか?」

『は?…あの、更衣室は‥?』

「‥行った、だが…女子がいて…」

(ファンクラブか…うわあ…かわいそ…)

『あー成る程…お疲れさまです。わたし出てるから』

 すまない、そう聞こえるのをさり気なく流してジュースだけを持ち教室を出る。廊下の窓から外を見つつ紙パックのジュースを吸う。するとドタドタと賑やかな音がした。ちらりとそちらを見れば山のような女子生徒。「今日こそ修也様の着替えを撮るのよ…!」「はい!!」おいなんか凄いこと聞こえたぞ。「そこのあなた!」辺りを二、三度見回す。

『…わたし?』

「そう!! 修也様…豪炎寺修也様を見なかったかしら!?」

 ファンクラブだな。確信。彼女はきょろきょろしながらもわたしの言葉を待っていた。彼は目の前の教室なのだが…仕方ないなあ、もう。

『第二棟に行きましたよ。此処から見てました』

「なんですって!?」

 ありがとう!!そう言った彼女達は凄まじい勢いで第二棟へと消えていった。確かにありゃ大変だわ。逃げたくなんのも解る。サッカー部ってのはこんなに大変なんだねえ。

「、助かった」

 ひょっこりと教室から顔を出した豪炎寺修也。なんか可愛いな。『気にしないで』そう言えば「入っていいぞ」と。言われるがまま入ると豪炎寺と目が合った。「、お前さっき」ぱちり、と彼が瞬きをした。

「授業見てたよな?」

『…?』

「4階の教室の窓から。その後先生に見つかってた」

『…あー!え、あれ君だったの?』

「ああ」

 ジーザス!やらかしたよわたし!さっきのは豪炎寺だったか。よく見えたね。『…毎日大変なんだねえ』「…慣れた」言ってみたいわ。しかし、気のせいじゃなかったことに泣きたいよね。まあいいや、ご飯食べたい。トコトコと弁当のある席に戻れば目の前の椅子を引いた彼。

「まだ弁当食べてないんだ。一緒に食べてもいいか?」




No,Thank you!
(どういうことだってばよ!)

‥‥
豪炎寺フラグうまい。ウヘヘ
次回まで続くよ!

(120414常陸)
(120510加筆修正:常陸)


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