"アルカンシエル"最近市民の間で密かに囁かれる名前。誰かがフランス語で"虹"を意味すると言っていた。ヒーロー達の間でも話題に上がっていた。折紙サイクロンであるイワンが助けられ、アルカンシエルの姿を擬態したことでヒーローが皆、その容姿を覚え探していた。無論、アルカンシエル本人はこのことを知らない。
しかし、性別も曖昧とはな。虎徹は車のハンドル上で腕を組み顎を乗せた。折紙曰わく「スポンサー、かどうかはわからないけど…黒いジーンズに杖に巻き付いた白蛇が描かれてました」とのこと。奴が助けた市民もそう言っていた。バイザーも付けていたらしく顔も曖昧。
(簡単には探させない、てか…)
アニエスも既にアルカンシエルの存在を知り何とか映像をと躍起になっていた。三度の飯よりも視聴率のアニエスにとってニューヒーローのお出ましは最高のディナーなのである。その為、デスクワークを得意としない虎徹を顎で使い、アルカンシエルを探させているのだ。
虎徹は道路に駐車した車から流れる人の波を見つめていた。こんなことをしていても現れないとわかってはいるが、如何せん見つけられない。会社に帰るか。エンジンをかけようとしたその時。爆発音が響いた。
⇔
千尋は病院の救急車で現場に向かっていた。既に着替えも済み、バイザーのチェックも完了させ道を開ける車を眺めていた。病院に勤める医師と看護士で形成された救急隊−極秘事項のアルカンシエルが千尋と知る人物達−と共に建物や道路を頭に叩き込む。全て記憶して直ぐに現場に到着した。裏道に下ろされた千尋は救急隊に正面にいるように指示し、通路を曲がった。
ドンッ
『−−っ!!』
「っ悪い!急いで…っ!お前!!」
『…ワイルドタイガー』
「アルカンシエル!! 見つけた!!」
『は?』
ぶつかったのは千尋が会うまいと努力していた人物だった。強く右腕を掴まれる。如何したものか。早く助けに行きたい。千尋は面倒な事になった、とバイザーの下で眉をひそめた。
「探してたんだよ!! 一緒に来てくれ!」
『…断る』
「な!! 何でだ?」
『早く人命救助をしなければならない』
『貴方もだろう、』
な、タイガー。千尋は虎徹を睨み腕を振り払って、建物に入った。一瞬たじろいだ虎徹は今は仕方ない、と自身も人命救助へと向かった。
⇔
「こりゃひでぇ…」
『…‥だれかいないか、』
周囲は瓦礫で埋まっていた。千尋は仕方なくヒーロースーツを着ていない虎徹と共に逃げ遅れた人がいないかを探す。ある程度探したところで連絡が入った。
《もう全員避難したらしい。建物から出て大丈夫だ》
『了解。‥もう避難は完了したらしい』
『私達も出るぞ』
「ああ。−−っ、あぶねえっ!!」
『−!?』
勢い良く背を押されたと同時に背後で悲鳴が上がった。千尋は慌てて振り返り、虎徹に駆け寄った。『大丈夫ですか!?』瓦礫で右足が潰れていた。「大丈夫だ」そう言った虎徹はハンドレットパワーを発動させ瓦礫をどかす。逃げるように促されたが千尋は逃げなかった。
『治療します』
「は?こんなんどうってことね、〜っ!」
『どこがだ…完全に潰れてる』
「だからだいじょう、っ!!…な…‥」
『いい加減黙って』
一向に言うことを聞かない彼の後頭部を強く押した。途端に気を失った虎徹を確認した千尋は能力を発動させて治療を始めた。骨が砕けている。これじゃ治した後のわたしも骨折かな。自身の足に痛みを感じ始め、自分の治癒も同時に行った。治療を終えた千尋は虎徹を抱え通信を繋いだ。
『‥裏口にまわれ』
了解、返事と共に通信が切れる。右足を引きずり裏口から出た。虎徹の重みを感じながら千尋は歩いた。能力を知られるとまた面倒だ。だから気絶させた。千尋は申し訳ない気持ちで一杯だった。
到着した救急隊に虎徹を任せた千尋は私服に着替えて誰もいない路地裏に座り込んだ。右足がずきずきと痛む。
『…ちょっと休憩』
小さな溜め息がひとつ、路地裏に消えた。
発見、ヒーローは誰?
(なんか、嫌な予感がするんだよなあ…)
‥‥‥
次の話まででセット。千尋ちゃんは頑張ってキャラを作ってます。ボロが出ないようにね、
(111002 常陸)
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